岡藤正広Photo:JIJI

欧州出張で環境意識の高まりを実感
脱炭素社会への対応にさらに注力

 岡藤正広が「浸透するまで繰り返す」としているのがマーケットインの考え方だ。プロダクトアウトとは正反対の考え方で、消費者が欲しいものを見つけてきて、提供することをいう。

 岡藤がマーケットインのシグニチャーとして挙げているのが「肌感覚の環境意識」から出発した事業だ。

 2018年、ヨーロッパ出張した彼はミラノのホテルに到着した後、歯を磨こうとしたら、アメニティーの歯ブラシが置いてなかったことに気づいた。彼が泊まるくらいだから高級ホテルだ。それなのに歯ブラシがなかったので、不審に思いフロントに電話したところ、「環境のため、希望される方だけに提供しています」との答えだった。

 18年の時点でヨーロッパの高級ホテルはすでに環境意識に重きを置いていた。決まり悪さを感じながら、歯ブラシをもらった岡藤が部屋のテレビを見ていたら、「スターバックスがプラスチック製ストローを廃止し、紙ストローに替える」というニュースが流れた。

「これはもう待ったなしだ」

 岡藤は環境対応を進めなくてはならないと思った。脱炭素社会に関する情報は彼がヨーロッパへ出張する前からさまざまな形で世の中には発信されていた。しかし、彼は現場で感じたリアルな体験、つまり肌感覚を重視した。