水風呂の冷却装置で
差別化を図るホテルも

 他にも付加価値として目につくのはサウナや大浴場。しかし、瀧澤氏によればこの点はドーミーインの専売特許になりつつあるという。

「ドーミーインを運営するのは、もともと学生寮や社員寮を事業とする共立メンテナンスという会社です。出張した入居者の『ビジネスホテルにも社員寮のような大浴場があったらいいのに』という声を聞き、天然温泉大浴場やサウナ付きのホテルの建設を始めました。1993年からそのようなコンセプトでスタートしていますから、業界ではパイオニアであり、やはり他社よりもクオリティは圧倒的に優れています。もちろん、従前から大浴場やサウナを設けているビジネスホテルはありましたし、いまも運営されているわけですが、全国規模の多店舗展開という規模では、ドーミーインが群を抜いています」

 とはいえ、ドーミーインが進出していない地域もあるため、大浴場やサウナの有無が訴求ポイントになることも間違いない。瀧澤氏によれば、ここでさらにニッチな差別化も繰り広げられているという。

「ビジネスホテルではサウナの水風呂の温度も差別化のポイントになり、“水風呂競争”も起こりつつあります。とあるドーミーインの店舗で『ただいま、水風呂マイナス1℃キャンペーン』をしていましたし、広島が本社で全国展開するベッセルホテルズも20℃近かったのですが、最近では15℃以下になっています。他にも、今後はいかに着心地のいい館内着を作るかなども、差別化の争点になりそうですね」

 ちなみに、水風呂の温度を下げるチラー(冷却装置)は、導入コストに加えて電気代もかなりかかることで知られている。このように、多くのコストをかけてまでユーザーを獲得し、各社が生き残りをかけているのだが、今後の展望を瀧澤氏はこう語る。

「差別化競争に戦線離脱するところが出てくるでしょうね。実際に豪華な朝食はもうやめようかというホテルの声も聞こえます。確かに長年事業を続けてきたホテルは仕入れや食材、運営などに関してノウハウがある一方、新興ホテルや新規参入組には厳しい面があるのかもしれません。また、生き残ったホテルでも、さらにサービスの格差が進むと思います」

 とはいえユーザーとしては、今後どのようなサービスがビジネスホテルで味わえるのか楽しみである。