楽しみ方は無限大
“防災”の広義流動性

 防災を「しなくちゃいけない」と考えると腰は重くなるが、防災する過程に何か楽しみが見いだせれば、足取りは打って変わって軽やかになる。Aさんの場合でいえばそれが「キャンプ」であった。
 
「防災」と言ってもその内実、「防災グッズ(非常食や携帯トイレ、ラジオなど)を揃える」、「ハザードマップの確認」、「家具の転倒防止」、「避難訓練への参加」など各種ある。たくさんあるからこそ「それらを目の前にしてやる気が起きない」というのもあるのだが、言い方を変えれば、それが防災につながるなら、なんでも「防災」と考えることもできるのである。
 
 たとえば緊急避難時、自宅内での安全な動線の確保、および家具が万が一転倒した際に被害を最小限にとどめるために有効な試みといえば、模様替えである。家具をちょっと移動させるだけならそれほどの手間を掛けることなく「防災」を成し遂げ、かつ趣きの変わった部屋を楽しむことができる。
 
 ハザードマップの確認も、乙なものになりうる。避難所へのルートを再確認し、改めて散歩してみれば「ここの電柱は老朽化していて危険」といった新しい発見があるかもしれない(発見のある散歩は得てして楽しいものである)。筆者の場合だと、一度も足を踏み入れたことのない近所の建物が実は最寄りの避難所であることをハザードマップで知り、「おっ、あそこが」という小さな驚きが面白かった。
 
 その他「非常食を吟味して好物でそろえる」「家族で起震車(荷台部分が簡易的な部屋になっていて地震を疑似体験できるあれである)に乗りに行く」「災害時に有用な最強アプリやちょっと変わったお役立ちグッズを探してみる」などなど、やりようがいくらでもあるのが「防災」である。