銅相場は3月に1万845ドルの最高値を付けた後7月には7000ドルを割った。その後は一進一退の動きを続けている。先行きも上値は重そうだ。相場の先行きに影を落とす要因について解説する。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)
3月に史上最高値を付けた後
下落基調に転じる
エアコン、自動車、建築物など幅広い分野で利用される銅の相場は、ウクライナ情勢悪化を受けて銅供給の混乱やエネルギー高騰が懸念された3月7日に1トン当たり1万845ドルと史上最高値を付けたが、その後軟化して7月15日には6955ドルまで下落した。8月中旬には8200ドル台に持ち直したが、9月初めには再び7500ドル台まで下げた。
今年の春以降の銅相場の動きを見てみよう。4月後半頃から下落のテンポが速まった。その背景には、最大消費国の中国で新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)など制限措置が長期化したことに加えて、FRB(米連邦準備制度理事会)など主要国の中央銀行が金融引き締めの動きを加速させたことがあった。
4月21日にパウエルFRB議長が5月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で0.5%の大幅利上げを検討する方針を表明した。
25日には、米金融引き締め観測を背景としたドル高に加えて、中国での新型コロナ感染拡大を受けて上海で都市封鎖が長引き、北京でも一部外出制限が導入される中、銅の下落幅は大きくなった。
5月に入って、連休明けの3日はアルミニウムなどとともに銅の下落幅も大きくなった。前月末に発表された中国国家統計局による製造業PMI(購買担当者景況指数)と財新/マークイットによる製造業PMIがともに市場予想を下回って売り材料になった。2日発表のISM(米供給管理協会)の製造業PMIも下振れた。
9日には、中国のロックダウンや米国の利上げ継続が世界景気を減速させるとの懸念が、株式や原油に加えて、銅にも及んだ。12日には、銅の下げ幅はやや大きくなり、一時9000ドル割れとなった。
5月後半はやや反発した。16日は、中国の上海市当局が3月下旬から続いたロックダウンを6月に全面解除する方針を示したことで、中国の金属需要の回復期待につながった。
20日は、中国人民銀行が住宅ローン金利の基準となるLPR(最優遇貸出金利)5年物を0.15%引き下げて4.45%としたことが好感された。
6月1日は、中国・上海でのロックダウン解除や5月30日に決定されたEU(欧州連合)によるロシア産石油の禁輸を受けた原油高が銅相場の支援材料になった。英国の連休明けの6日には一時9805.50ドルと4月末以来の高値を付けた。
しかし、この後、相場は再び下落に向かう。7月中旬に7000ドルを割ってしまう。その後持ち直すも一進一退の動きを続けている。先行きの上値を重くしている要因について、相場の動きを振り返りながら次ページ以降分析する