銅価格Photo:PIXTA

銅相場は3月に1トン当たり1万845ドルの史上最高値を付けた後下落し、現在9000ドル前後で推移している。ロックダウンによる中国経済減速、ドル高など先行き上値を抑える材料がある一方、相場を支える材料もある。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)

3月上旬に1万845ドルの最高値
足元は9000ドル前後

 世界景気の先行指標とされる銅相場は、3月7日に1トン当たり1万845ドルの史上最高値を付けた。その後、高値圏での推移が続いたが、足元では9000ドル前後まで下落しており、先行き不透明感が出ている。

 2022年に入ってからの銅相場の動向を振り返ると、年初には、欧州で電力や天然ガスの価格高騰が再燃したことや、オミクロン株の感染拡大による景気や金属需要への影響は小さいとの見方が続いたことが銅を含めた金属相場を押し上げた。

 12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)の議事要旨を受けて、早期の利上げ観測が強まったことは弱気材料だったが、12月の米雇用統計が市場予想を下回ってドル安につながったことは強気材料になった。さらに中国景気が金融緩和など刺激策によって上向く段階へシフトしつつあるとの観測も出て、1月12日には銅は1万ドルを上回った。

 14日には、ハト派的だとみられていたFRB(米連邦準備制度理事会)のブレイナード理事が上院銀行委員会の公聴会で3月の利上げの可能性に言及して、銅相場は下落した。しかし、18日に中国人民銀行の劉国強副総裁が成長安定化に向けてさらなる政策を講じると表明したことが好感され、20日に銅相場は再び1万ドルを回復した。

 下旬には、米金融政策を巡る思惑で軟調となった。FOMC前の24日には、先行きの利上げ懸念から売られた。26日発表のFOMC声明文ではそれほどタカ派姿勢は示されなかったものの、パウエルFRB議長が記者会見で、今後のさらなるタカ派化を否定しなかったことで、27~28日の銅相場は下落幅が大きくなった。

 2月初めはISM(米サプライマネジメント協会)製造業景況感指数や各国のPMI(購買担当者景況指数)が製造業活動の堅調さを示す内容だったことや、LME(ロンドン金属取引所)指定倉庫の在庫減少が続いたことが支援材料となった。

 株高やドル安を背景に9日の銅相場は上昇幅がやや大きくなり、10日には、米CPI(消費者物価指数)の上昇率が市場予想を上回ったことで、インフレに強い投資先として銅が買われ、一時1万289ドルまで上昇した。

 しかし翌日には、米金融引き締め観測から長期金利が上昇し、株価が下落する中、リスクオフ・ムードが銅にも及んだ。その後は、ウクライナ情勢を巡って神経質な相場動向が続いた。

 24日にロシアがウクライナに本格的な軍事侵攻を始めた。供給制約やエネルギー高による製錬コスト上昇の影響が大きいと考えられたアルミニウム、亜鉛、ニッケルなど他のベースメタルの相場上昇率が大きくなる中、銅は製錬コストの上昇が押し上げ圧力になる一方で、景気への悪影響が下押し圧力になると受け止められ、横ばいだった。

 その後も、西側諸国の対ロシア制裁に関する思惑によってエネルギー価格が変動する中、他金属の価格変動は大きくなったが、銅は横ばい圏の推移となった。