在宅ワークの普及により
依頼内容に変化も

 本書内では、コロナ禍ならではの依頼も多数描かれている。特に印象的な依頼が、「在宅ワークに集中したいので、親が出かけたふりをしてほしい」という内容だ。シッターが家に来たらまず親が出かけ、その後シッターと子どもが外出。子どもが不在のタイミングで親が自宅に戻って仕事部屋にこもり、時間差で子とシッターが帰宅して、子どもには「親は出かけている」という体で保育をするというものだ。

「在宅勤務の保護者が増え、それに伴って『在宅ワーク中に別室で保育をお願いします』という依頼は増えました。フルタイムで8時間ぐらい見ることもあれば、オンライン会議中の1~2時間だけ見てほしいなど、用途に合わせて依頼をいただいています」

 コロナ以前からの待機児童問題に加え、在宅勤務者の増加が追い風になっているのか、ベビーシッター利用支援事業も拡充してきている。企業の福利厚生、自治体の補助制度などを使用すると、利用料が安くなるのだ。

「利用料の相場は、1時間2000円程度。今年に入って補助金額も増えたので、金銭的な理由から利用を思い悩む人は少なくなってきていると感じます」

 では、さいお氏が思う利用のハードルになっている要因とは。

「周囲の目です。依頼者は母親が多いのですが、祖父母や夫から『他人に見てもらうなんて子どもがかわいそう』『母親が見ればいい』『家に人を上げたくない』などと言われ、なかなか利用に踏み切れない人は多いように感じます。実際に『親戚の体で……』とお願いされるケースも多いです」

「子育て=母親がするもの」「子は親が手間をかけてこそ育つ」というイメージが根強い人、そしてその認識を他者にも求める人は、まだ少なくないようだ。