特定の条件を満たせば
“金のなる木”を生み出せる

 このウォルマートのビジネスモデルは、そのままPayPayや楽天ペイ、イオンやセブン&アイは模倣できるはずです。しかし、それ以外の企業にとってもチャンスがあり、参入可能かもしれません。

 具体的な企業名を挙げさせていただくと、JR東日本はチャンスのある異業種の筆頭です。ただし、おそらく参入しないのではないでしょうか。

 これはSuica全般に言えることなのですが、フィンテックのビジネスチャンスは山ほどあるのですが、前提としてSuica自体にシステム障害が起きると、鉄道運営に支障をきたすのが理由です。ほかの鉄道会社も同じ判断をするかもしれません。

 しかし、位置情報を握っている企業が決済手段でもメインバンクの地位を手に入れたら、そこで展開できる周辺ビジネスチャンスは莫大になります。考え方を変える鉄道会社が出てきてもおかしくはないと私は思います。

 同じ異業種インフラ企業でも、実は携帯電話会社や電力会社などは、比較的大規模な形で参入することができる立場にあります。

 具体的には、PayPayや楽天ペイがコツコツと利用者を集めようとする隙をついて、銀行と資本提携をしてペイロールカード子会社を設立するのです。

 そうやって銀行のもうからない個人客を、ポイントを餌に移管する形でごっそり獲得するような動きが始まれば、決済ビジネスの業界地図は大きく塗り替わるかもしれません。

 つまり、顧客の購買情報、位置情報、ポイント付与の仕組みなどを持っており、インフラとして多くの顧客を抱えていることが「特定の条件」に該当します。

 従来型の銀行のようなビジネスモデルではもうからない顧客を、銀行ではない異業種が金のなる木に変えるというのが、実はデジタル給与の本質です。今回のデジタル給与解禁、どの企業が本格参入するのか、興味津々で状況を見守りたいと思います。