写真:履歴書,ビジネスマンPhoto:PIXTA

日本では「働き方改革」の必要性が叫ばれて久しいが、今、ハーバード大学では本腰を入れて働き方研究を推進しているという。中でも日本企業の働き方に注目し研究を行うジョセフ・フラー教授に、日本を研究対象とする理由や興味深い人材活用の事例について話を聞いた。(聞き手/作家・コンサルタント 佐藤智恵)

ハーバード大学で「働き方」が
最先端の研究テーマに

佐藤智恵(以下、佐藤) 近年、ハーバード大学およびハーバードビジネススクールで、「未来の働き方」(Future of Work)を研究するプロジェクトが次々に発足しています。日本では「働き方改革」の必要性が叫ばれて久しいですが、ハーバード大学が本腰を入れて働き方研究を推進しようとしている理由は何ですか。

ジョセフ・フラー(以下、フラー) ハーバード大学が「働き方研究」を推進している理由は、主に二つあります。一つは「未来の働き方」が、今後のアメリカの国際競争力に大きく影響することです。私が共同議長を務めているハーバード大学の「労働力研究プロジェクト」もハーバードビジネススクールの「未来の働き方マネジメント」も、アメリカの国家競争力研究プロジェクトの一環として位置づけられています。

 国や企業が成長していく上で、重要な鍵を握るのが人的資本(Human Capital)です。ビジネスの未来は人間の働き方の未来にかかっているといっても過言ではありません。ハーバードビジネススクールのミッションは世界を変えるリーダーを育成することですが、未来のリーダーにとって働き方のトレンドを理解し、今後のビジネスへの影響を予測しておくことは必要不可欠なのです。

 もう一つは、アメリカ国内に働き方についての学部横断型の研究、未来志向型の研究が全般的に不足していることです。人口構成の変化、テクノロジーの進化などの影響によって、私たちの働き方は変化しつづけています。ところがこれまでアカデミックの分野からは、経営者や政策立案者に役立つようなアイデアを十分に提供できていませんでした。そのためハーバード大学は2019年、ハーバードビジネススクール、ハーバードケネディスクール、ハーバード大学教育大学院から研究者を集め、学部横断型の「労働力研究プロジェクト」を発足させたのです。

佐藤 フラー教授は、19年にハーバードビジネススクールの教材『日本の人口動向と働き方の未来』を出版しました。なぜ、世界の中でも日本人の働き方に注目して、教材を執筆したのですか。