金融市場が大荒れとなる中でも資金の逃避先を提供するとうたったファンドにマネーが再び流れ込んでいる。ただ、こうした「低ボラティリティー」ファンドは、新型コロナウイルス流行が深刻化していた時期に、期待されていたような実績を出せなかった「前科」がある。
「低ボラ」と称する投資信託や上場投資信託(ETF)には今年、約65億ドル(約9300億円)が流入しており、年間ベースで2019年以来の流入超となる見込みだ。モーニングスター・ダイレクトが分析した。低ボラファンドは、値上がり・値下がり双方向での1日当たりの株価変動が最も小さい銘柄を組み込むことで、市場全体が乱高下する中でも安定したパフォーマンスが期待できるとしている。そのため低ボラファンドは公益、消費財、不動産会社など、景気浮沈の影響を受けにくい業種で構成される傾向がある。
ファクトセットによると、低ボラファンドで最大の「iシェアーズMSCI Min Vol USA ETF」には過去1カ月に10億ドル余りが流入。米国の株式ETFで最も人気の高いファンドとなった。背景には、米連邦準備制度理事会(FRB)の積極的な金融引き締めで、株式市場の見通しが悪化するとの懸念がある。S&P500種指数はここ1カ月に5%下げており、年初来の下落率は21%に達した。
同ファンドの運用資産は280億ドルに増加したが、2020年2月につけたピークの400億ドルには届いていない。
低ボラファンドは2007~09年の世界的な金融危機を受けて誕生し、その後も爆発的に伸びた。ところが、コロナ禍初期に株式市場全体が大きく売り込まれるのに伴い、同ファンドも急落。マネーの逃避先を提供できず、拡大基調にストップがかかった。