ネット通販やサブスク事業の成長が鈍化している

 新型コロナウイルス感染症の発生と感染再拡大の長期化によって、アマゾンなど有力IT先端企業への成長期待は一時、大きく高まった。感染再拡大を抑制するために各国でロックダウンや外出自粛要請が行われ、人々が自由に外出し、買い物を楽しむことは難しくなった。

 そうした状況下、米欧でアマゾンは倉庫の建設や人材採用を増やし、ネット通販需要の急増に対応した。カナダの「ショピファイ」や韓国の「クーパン」など、新興ネット通販企業の成長期待も高まった。

 また、21年11月下旬まで米連邦準備制度理事会(FRB)は、「物価上昇は一時的」と誤った認識を続けた。カネ余り環境の長期化と、過剰なまでの成長期待の上昇によって、世界的にネット通販などIT先端企業の株価は大きく上昇した。

 しかし、FRBはそうした認識を改めて以降、インフレ鎮静化を急ぐ考えを時間の経過とともに強めている。金利は上昇し、株価の下落圧力は高まった。加えて、ネット通販や、サブスクリプションなどの分野では競争激化によってビジネスモデルも行き詰まり始めた。

 サブスク関連分野では、広告ビジネスに依存したメタの下落が目立つ。ネット通販分野ではショピファイの株価下落が大きい。巣ごもり需要の一巡や、主要先進国で徐々にソーシャルディスタンスが緩和されていることもネット通販企業には逆風だ。

 米欧ではウィズコロナの社会・経済運営が進み、通常の消費行動が回復しつつある。人々の欲求を満たすために、小売店舗の運営形態も大きく変化している。

 米国で注目したいのは、大型ショッピングモールにカジノや室内型テーマパークを併設し、日用品などの買い物からレジャー(余暇)の充実を一気に享受できる施設が人気を集めている点だ。

 そうした結果、アマゾンでは過剰な物流施設や人員が顕在化した。世界的な物価高騰を背景に、燃料や人件費などのコストプッシュ圧力も強い。保有してきた株式の下落も加わり、22年4~6月期まで2期連続で、アマゾンの最終損益は赤字だった。