アマゾンが収益力強化を急ぐAWS事業

 ただし、アマゾンの事業ポートフォリオすべてで収益力が低下しているわけではない。ネット通販事業とは対照的に、クラウドコンピューティングサービスなどを運営するAWS事業は成長している。

 最大のポイントは「ウェブ3.0」だ。1990年代半ばから2000年代初頭の「ウェブ1.0」の時代、ヤフーなどがニュースなどを発信することで、人々はインターネットを閲覧利用した。

 その後、GAFAなどの成長によって世界は「ウェブ2.0」へ移行。プラットフォーム上で人々は多種多様なサービスをサブスクライブし、引き換えにIT先端企業はビッグデータを手に入れた。しかし、規制強化や競争激化によってそれらの成長は鈍化している。

 本格到来が予想される「ウェブ3.0」の時代では、ネットの世界は一部有力企業による寡占(中央集権的な体制)から、分散に移行する。それに伴い、個人が考案したプロジェクトに賛同する人が集まって非代替性トークン(NFT)を発行し、発行履歴などのデータをブロックチェーン(分散型元帳技術とも)で管理するようになるだろう。

 事業が収益を生むにつれてトークンの価値は増え、保有者間で収益は分配される。このようにウェブ3.0の時代では、個を軸とした事業運営(自律分散組織、DAO)が増えると考えられる。

 そうした展開を見越して、アマゾンはAWS運営のパートナー企業を急速に増やしている。象徴的な提携例がIBMだ。IBMは企業向けのITサービスでAWSに追い抜かれた。IBMはアマゾンと正面から競合するよりも、業務の自動化やビッグデータ分析、情報セキュリティーなどのソフトウエアをサービスとして(SaaS、Software as a Service)AWS上で提供し、成長を実現しようとしている。

 そうした企業の増加によって、6月末時点でAWSとシステムをインテグレートする企業は世界全体で10万社を超えている。アマゾンは、NFTの取り扱いに関しても前向きだ。それによってアマゾンはバーチャルなオフィスや、ゲーム空間など多様な機能をAWSに実装し、ウェブ3.0時代の人々の新しい生き方を支える基盤に成長させようとしている。