一段と加速するアマゾンの創造的破壊

 IT先端企業はネット通販やサブスクリプションに代わる、新しいビジネスモデルを確立しなければならない。年初来の株価下落率を比較すると、クラウド事業の強化に集中するアマゾンやグーグル、マイクロソフトは、メタやショピファイよりも株価の下落率が小さい。ネット通販やサブスクから、クラウドなどへ、相対的に成長期待の高い分野に迅速かつ大規模に経営資源(ヒト・モノ・カネ)を再配分できるかが、企業への成長期待に影響を与えている。

 ウェブ3.0で社会と経済がどのように変化するか、まだはっきりとしない。その分、各社の事業戦略が、ウェブ3.0時代の世界により大きなインパクトを与えるだろう。

 より大きな先行者利得を手に入れるために、アマゾンは物流施設やネット通販事業の効率性を一段と高める必要がある。そのためにアマゾンは物流施設内のロボットシステムなどを開発するクロースターマンズ(ベルギー)を買収したと考えられる。

 一方、AWS事業においてアマゾンは、より多くの企業と戦略的提携を増やそうとするだろう。それに伴い、量子コンピューティングや人工知能(AI)、NFTの取引体制など、先端分野での取り組みはさらに強化される公算が大きい。

 見方を変えると、アマゾンは投下した資本の回収よりも、より持続的な成長期待の高い分野での取り組みを優先している。企業というのは往々にして、すでに支払いの回収ができないコスト(サンクコスト、埋没費用)を回収しようとする。その結果、新しい取り組みは遅れがちだ。1990年代以降のわが国経済がまさにそうだった。

 しかし今、そうした発想で成長を実現することは難しい。今後、アマゾンの創造的破壊はさらに加速し、ウェブ3.0時代の経済活動もより具体性を帯びるだろう。世界経済の後退懸念が高まる中、わが国経済が成長を遂げるために必要なのは、より多くの本邦企業がアマゾンのように自己変革に取り組み、新しいビジネスモデルを確立することに尽きるはずだ。