――投資家向けコラム「ハード・オン・ザ・ストリート」
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物価上昇で購買力が低下、金利は上昇し、リセッション(景気後退)を懸念する企業は一段と増えている。そんな中、米国の貧困層と労働者階級はもちこたえているばかりか、富裕層よりもうまくやっているようだ。
1980年代以降、米国を特徴づけてきた所得と富の格差拡大という点から見れば、これは驚くべき展開だ。新型コロナウイルス禍が深く根付いた経済パターンにどれだけ変化を与えているかを物語っている。こうした傾向が続けば――あくまでも仮定の話だが――長期的な影響をもたらす可能性がある。
リセッションは大半の人にとって有害だが、とりわけ貧困層と労働者階級が打撃を受けやすい。景気悪化を乗り切るための金融資産もなく、往々にして真っ先に解雇され、最後に再就職する貧困層は、なんとか元の生活を取り戻すのに何年もかかることが多い。
だがコロナ禍は違った。第一に、政府が数回にわたり支給した給付金が家計を支えた。これはとりわけ、所得と保有資産の割に給付金の額が大きかった貧困家庭に当てはまる。第二に、経済の回復に伴い労働者不足が生じたことで、低所得層の賃金は高所得層よりも急速に上昇し始めた。低所得層の賃金が伸び悩んだ金融危機後の数年間とは好対照だ。
賃金上昇率が上がったことで、低所得層はインフレについていきやすくなった。米労働省によると、所得で見た下位10%の上の方にいる労働者の場合、4-6月期の一般的な週間収入は前年同期比9%増加した。(コロナ前の)2019年10-12月期と比べると17.1%増だった。これはそれぞれの期間の消費者物価の伸び8.6%と13.2%を上回る。