「NFTアート」への投資は相続税対策になるのか?

 これまでは美術品等の動産を相続したら、相続税額を計算するため、鑑定人等に鑑定を依頼して財産価値を評価する必要があった。しかし、NFTアートはそれ自体が自らを保証し、取引履歴も記録されているので、その必要はなくなるだろう。

 また、日本の相続税法には「特定の美術品についての相続税の納税猶予及び免除」という特例制度がある。特定美術品とは、重要文化財に指定され、世界文化的に見て、歴史上、芸術上、学術上、特に優れた価値があると認められるものだ。

 将来、美術館に展示されるような価値ある重文級NFTアートが出現すれば、「特定美術品」として相続税の納税猶予や免除が適用できる可能性がある。相続人は総相続税額のうち、その特定美術品に係る課税価格の80%相当額が猶予される。その後、その相続人が死亡した場合、猶予されていた納税額が免除される。ただし、手続きは相当煩雑だ。

 なお、文化庁も日本のアート市場の活性化をけん引する存在として、NFTアートに注目しているようだ。文化・芸術全般に関する調査審議等を目的として文部科学省に設置された「文化審議会」で、「NFT」「メタバース」について議論されている。メタバースは、コンピューターやネットワーク上に構築された3次元の仮想空間やそのサービスで、創作の場やミュージアムなどの活用が考えられる。

 日本でアートの購入に熱心なのが、新富裕層と呼ばれるIT関連の若手成功者たちだ。かつての富裕層にとっては高級外車やクルーザーがステータスだったが、コロナ禍で新富裕層の関心も外より内に向いているそうだ。日本のNFTアート市場の行方も新富裕層にかかっているかもしれない。

 NFTアートもデジタル資産であり、仮想通貨同様、実体がない。相続財産として残すなら、いざ相続が発生したとき、暗証番号がわからない、遺族がその存在自体を知らないといった、デジタル資産にありがちなトラブルにも留意しておきたい。