円安・金利高・インフレに勝つ!最強版 富裕層の節税&資産防衛術#15Photo:PIXTA

節税目的の副業に待ったをかけるため、国税が打ち出した「300万円以下の副業は雑所得」扱いとする制度変更。膨大な反対意見がパブリックコメントとして寄せられ、300万円の区切りは撤回せざるを得なくなった。だが、だからといって節税目的の副業への規制はゼロではなく、強化の動きが止まったわけでもない。うっかりしていると、副業の“やり損”なんてことも。特集『円安・金利高・インフレに勝つ!最強版 富裕層の節税&資産防衛術』(全16回)の#15では、その注意すべきポイントについて解説しよう。(税理士 吉澤 大)

反対意見が殺到、「300万円以下は雑所得」を
取り下げざるを得なかった国税庁

 近年では、思うように給与が上がらないことから、副業を始める人も多いようである。その副業についての税金の取り扱いについて、ある改正案が物議を醸した。

 それは、副業収入についての「事業所得」と「雑所得」の判断基準を明確にしようとするものだ。具体的には、税務署は副業収入が300万円以下の場合には、特に反証のない限り雑所得として取り扱ってもよいとするものである。

 所得税法上、所得はその発生原因などにより10の種類に区分けされている。その中の一つ、事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業、その他の事業を営んでいる人の事業から生ずる所得のことをいう。一方で、残り九つのどれにも該当しない所得を雑所得という。

 事業所得と雑所得では、その取り扱いが大きく異なる。事業所得であれば、収入よりも必要経費の方が多く、赤字が生じた場合には、その事業所得の赤字と給与所得などの他の所得と相殺をする「損益通算」ができる。

 さらに、その事業所得の赤字が多額で、他の所得と通算をしてもまだ赤字が残る場合には、その赤字については、翌年以降3年間は繰り越して控除できる「純損失の繰越控除」を適用できる。

 要するに、事業所得であれば、赤字が生じてもその一部は税金が減ることでカバーできるわけだ。加えて、事業所得であれば、一定のルールで帳簿記載するなどの要件を満たせば、10万円、55万円、そして65万円の「青色申告特別控除」を受けることもできる。雑所得ではそれらができない。

 しかし、必ずしも事業所得が有利というわけでもない。事業所得は事業税の課税対象となるが、雑所得であれば原則として課税対象とはならない。雑所得は、「年末調整で税金の精算が完了する給与所得者である」など一定の要件を満たせば、20万円以下の場合、所得税の申告が不要とされているのだ。

 では、事業所得と雑所得の境界線はどのように判断されるのか。実は、その判断は悩ましい。これまではどのような基準となっていたのか。そして、国税が節税目的の副業に目を光らせる中、今後はどのような規制になりそうなのか。次ページから詳しく見ていこう。