アルジェリアで日本人10人犠牲の衝撃
『日本人とユダヤ人』が示唆したリスク
大規模なガスプラントが設営されているアルジェリアのイナメスで、イスラム系のテロリスト集団の襲撃によって日本人を含む多くの尊い生命が失われた。過酷な条件の下で仕事を遂行していた人々にとって、今回の事件はさぞ無念であったことだろう。
今回の事件によって、いくつかの事実が明確になった。それらを整理することは、相応の価値はあるだろう。1つは、わが国のプラント輸出関連企業の存在感だ。もともとわが国のプラント輸出の分野は、高い技術力や現場の調整能力を背景に高い評価を受けてきた。
韓国や中国などのライバルコントラクターとの競争は激化しているものの、新興国のインフラ投資や中東・アフリカ地域の資源開発関連などに重要な役割を果たしている。
2つ目は、情報収集能力を含めた安全に対する意識を高める必要性だ。今回の事件で最も批難されるべきは、理不尽な攻撃を仕掛けたテロリスト集団であることは言を俟たない。
しかし、こうしたテロ事件をなくすことは事実上不可能で、そうした事件が発生することを前提に、「自分自身の身を守る」ことの重要性を、我々自身がもう一度考え直す必要がある。特に今回の事件でも、わが国の情報収集能力については問題点が浮き彫りになった。
今から40年以上前、イザヤ・ベンダサン著の『日本人とユダヤ人』が一大ベストセラーになった。この本の中に、「日本人は水と安全はタダ」と思っているという表現があった。日本人の生活環境を考えると、安全でしかも水は自由に使うことができる。それは日本人の常識ではあるかもしれないが、世界の常識ではないという趣旨だ。“安全”はコストをかけて手に入れるものであることを再認識するべきだ。