胡錦濤は席を立つことに抵抗しているように見える
明報記者の観察は続く。
《胡を囲んだ習、栗、王のやりとりは続いていたが、何を論じていたのかは分からない。1分後、今度は若い職員がやってきて習のそばで腰をかがめてその指示を聞き、胡の後ろに回った。胡の眼鏡を手に取り、栗戦書が胡の前にあった文書をまとめて彼に手渡した。胡はこの時まだ立とうとしておらず、身体を習の方に向けて話をしつつ、習の前にある文書を自分のものと勘違いしたように手を伸ばしたが、習がそれを押さえた[注:この場面は前掲のYouTube動画ではカットされている]。職員は胡錦濤の眼鏡と文書を片手に持ち、もう一方で彼を支えて立たせ、主席台脇の通路を指し示してそちらに向かうよう促した。》
この様子は下のシンガポールメディアの動画が分かりやすい。
確かに、胡の健康状態はあまり良くなさそうに見える。だが、職員に脇を取られながらも胡は席から立ち上がることに抵抗しているように見える。最初の動画では机に両手を置いてここから離れないという意思表示をしたようにも感じられた。もちろん、それは足腰が弱っている老人が立ち上がる直前のもがきに見えないこともない。
だが動画では、隣の栗戦書が椅子から腰を浮かせて胡に手を添えようとしたところを、横の王滬寧が服を引っ張って座らせる様子がはっきりと捉えられている。明らかに「関わるな」というサインだ。やはり胡の退場は健康上の問題だけではなさそうである。
この前代未聞のシーンを見た人たちの多くが同じ印象を抱いたはずだ。健康上の問題ではないとするならば、「なぜ」胡は退席「させられた」のか? 残念ながらその理由を誰も見つけ出せずにいる。前出の明報記者は、記者たちが入場できなかった会議の最初の部分で何かが起きたのかもしれない、と推測している。