第一三共は期待の抗がん剤で絶好調も、不安を呼び起こす「3つのリスク」殺人罪で起訴された研究員が勤めていた、第一三共品川研究開発センター。この事件の広報を担当した社員も後日、別の盗撮容疑で逮捕… Photo:PIXTA
*本記事は医薬経済ONLINEからの転載です。

 その年で最も情報開示に優れていた企業に与えられる栄誉である「証券アナリストによるディスクロージャー優良企業選定」。今年、国内の敏腕証券アナリストが医薬品部門で選んだのは第一三共だった。医薬品セクターが対象となった17年度以降、一昨年までは塩野義製薬が連続受賞し、口の悪い業界雀たちは「まるで『モンドセレクション』のようだ」と陰口を叩くほどであったが、昨年はアステラス製薬が初めて1位となり、競争原理が働いていることが証明された。

 そうしたなかで第一三共は、研究開発分野を中心とした自主的情報開示において、アナリスト諸氏の高い評価を得た。総合的な情報開示に際しても、経営陣並びにIR部門が不公平や混乱を招かないよう努めている点が優れていたとされ、アステラスを三日天下で終わらせた。アナリスト向け説明会などにおける情報の質と量については一層の改善を求める声が一部であったものの、いずれにせよ、かつて、河村喜典・喜則親子の暴走の際に市場との対話に背を向けた会社の流れを汲むとは思えない変貌ぶりである。印ランバクシーを巡る蹉跌も、痛い思いを味わって、結果としてよい方向に傾いた。

 もっとも、足元の羽振りが良ければ自ずと口は軽くなり、図らずとも気前がよくなるのは、人も企業も変わらない。同社の「自信」の源泉となっている「エンハーツ」の成長に今後異変等が起きたときに、今と変わらぬ姿勢を取り続けられるか。第一三共という会社の改心が本物で、アナリストの眼力が確かなものか否かもそのときに判断されることになるだろう。

 実際、「好事魔多し」とはよく言ったもので、絶好調の第一三共においても、天候急変につながるかもしれないシグナルがここに来て、散発し出している。