金融機関側の対応は間に合うか
「期限」の問題

 抜本的に改革されるはずの新しいNISAは、本年末までに2023年の税制改正の要望事項として取りまとめられて、24年から具体的な運用がスタートしなければならない。

 本来、税務当局と金融庁の合意は11月上旬くらいにできて、それが発表されているべきタイミングなのだ。

 もう一点、NISAを扱う金融機関側のシステム開発の問題がある。現在のNISAの期限が23年で切れて、24年から新しい制度に移行しなければならないが、その細目が固まらないとシステム開発を発注することができない。また、開発やテストには当然時間がかかる。新しい制度の内容にもよるのだが、既に今の時点で取扱金融機関の全てが足並みをそろえてスタートすることが難しいのかもしれない。

 また、岸田政権がどれだけ持つのかという別の潜在的な期限も問題になる。今のところ、代替する具体的な勢力や政治家個人が見当たらないだけで、岸田政権は国民から強く支持されているわけではない。旧統一教会問題に対する信じられないほどのぐずぶりから見て、この政権は小さなきっかけで倒れる可能性がある。その場合、24年からNISAがなくなるということはあるまいが、内容的な改革は大きく減速して棚ざらしになるリスクがある。

「税金を取る側」の理屈とは?
国税の視点を考える

 今のところ、新しいNISAについては、(1)制度の恒久化、(2)税制優遇期限の無期限化がなされるのと同時に、(3)投資利益に対する課税が優遇される運用枠が拡充されると期待されている。さらに、(4)全体として「つみたてNISA」に準ずる仕組みを持ちながら税制優遇される枠の一部に「成長投資枠」(金融庁による仮称)を設けて、投資対象についてより制限の小さな投資が行えるようにする、という大枠が金融庁筋から検討事項として発表されているだけだ。

 しかし、NISAは税制に関わる制度なので、財務省・国税庁との合意なしに物事が動くことはない。

 投資家や金融機関の側から見た常識と、税務当局のロジックや時間感覚がずれることがしばしばある。

 筆者は投資家・金融機関寄りの立場なので想像力に限界があるのだが、新しいNISAの概要を、あえて国税側から眺めてみよう。