イトーヨーカドー中国1号店が25年の歴史に終止符
10月16日、日本に住む中国四川省出身の新華僑経営者が集まる「日本四川総商会」の設立大会が大阪で開催された。私は、四川省出身ではなく、上海出身なのに基調講演に呼ばれた。そこで、四川省との関係を強調しなければと思って、四川省の成都へ飛ぶ全日空の直行便の実現に関わったことや、成都に進出したイトーヨーカドーを私の観察拠点にしていたことなどに触れた。
前者は航空業界の交渉裏話に触れた内容だったが、後者は不定期とはいえ、ある程度の頻度を保った訪問をしていたため、仕入れた現場の実例を出すと、人々は関心を寄せてくれた。
しかし、この講演が終わってから2週間もたたない10月28日に、驚きのニュースが入った。
1997年11月21日に成都の繁華街に開いたイトーヨーカドーの1号店「春熙店」が、入居するビルのオーナーの都合で、今年いっぱいで閉店することになったという。経済評論家・邱永漢氏(故人)のすすめで、25年前に四川省に最初に進出した外資系大型GMS(ゼネラル・マーチャンダイズ・ストア。衣・食・住関連の商品を中心に、各種の商品を幅広く扱う量販店)業態の店舗が、こういう形で幕を閉じたことに、大きなショックを覚えた。
イトーヨーカドーを私の観察対象にしたきっかけは偶然だった。2000年のことだった。当時は北京の郊外にあった中関村でIT企業を取材していたのだが、偶然北京にある「華堂商場」という店のうわさを耳にした。中関村に住んでいる住民が、北京市中心部を横断してまで買い物に行くほど人気があるというので、休日を利用して訪ねてみた。
だが、タクシーを降りた瞬間、激しい後悔の念に襲われた。看板を見て、「華堂商場」はイトーヨーカドーだったということがすぐにわかったからだ。しかし、店に入ってびっくりした。店内は人であふれかえっていたのだ。