歴史的円安の裏に基礎収支の悪化、反転のため日本に残された「最後の手札」Photo:PIXTA

22年度上半期の経常収支の黒字は、前年同期に比べ4割減少した。安定的な資金フローを表す、経常収支と旧長期資本収支の合計である基礎収支の悪化が今回の円安の背景にある。反転に向け、日本に残された「最後の手札」があるのだが、それはいったい何か。(みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト 唐鎌大輔)

日米金利差だけでは
説明できない今回の円安

 11月上旬のドル円相場は米国の10月CPI(消費者物価指数)が予想を下回る伸びとなったことを契機として、米金利は低下しドル相場は一気に140円を割り込むまでに急落した。

 CPIの下振れは朗報だが、それでも前年比7.7%の伸び率は物価安定の目標からは遠いものであり、恐らくFRB(米連邦準備制度理事会)はタカ派寄りの情報発信で楽観ムードをつぶしにかかってくる可能性が高い。

 そもそも市場予想(今回の場合は同7.9%)と比べて0.2%ポイント程度の乖離(かいり)は、経済指標の発表においてよくある話だ。

 今後、FRBの利上げ幅は0.75%が0.5%に縮小していくことが見込まれるが、これまで日米金利差に関して「拡大する」と言われていたものが「ゆっくり拡大する」になっただけで、方向感の逆転が容易に起きるのだろうか。起きたとしてもそれほど深いものになるだろうか。

 今年の円安の値幅(38.47円)を半分戻しても130円台であり、「安い日本」のイメージが大きく損なわれるわけではない。目先の相場動向に一喜一憂するのではなく、「なぜ、2022年という年にここまでの円安が起きたのか」を真剣に考えれば考えるほど、金利差だけでは説明が難しいように思えてくる。

 今回の本欄では詳述を避けるが、例えば株式市場では実質金利の高低に着目した議論が盛んだが、実質金利で言えば日本は米国よりも高い。それでも金利要因だけで今年、40円弱も円安が進んだというのだろうか。さすがに無理があるように思う。

 それでは、金利以外の円安要因は何か。次ページからその要因が何かを明らかにするとともに、その要因に基づいた日本が取るべき方策について考察する。