このように幹部たちの間に「何が正しいのか」が共有され、徹底されていたからこそ、“do the right things”が可能になったのだと思う。「1人でも多くの命を救う」という強力な使命感が、不可能を可能にした。
ファイザーの成功は、意識の持ちよう次第で、チームの力を結集して偉大なイノベーションを生み出せることを示している。
なお、本書の題名である『ムーンショット』は、1960年代に米国のジョン・F・ケネディ大統領が、当時としては前代未聞だったアポロ計画を打ち出したことにちなんでいる。
この言葉は「困難だが、達成できれば社会に大きなインパクトを与える挑戦」という意味を持つ。まさに、ファイザーのワクチン開発に通じている。
ムーンショットを実現する第一歩は、気持ちを奮い立たせ、目的を達成する上で何が必要なのかを逆算して考えることなのだ。それをしなければ何も始まらない。
(情報工場チーフ・エディター 吉川清史)