そもそも体罰は必要なのか――。現在、日本中でスポーツ教育における体罰の是非が議論されている。大阪市立桜宮高校の男子バスケットボール部に続き、柔道女子日本代表からも「体罰問題」が浮上。その余波は広がる一方だ。部活動における体罰問題は数十年前から指摘され続けてきたが、いまだにそれが根絶されていないことを思えば、問題の根はあまりにも深い。教育現場の関係者に話を聞くと、体罰を是認する意識は“殴る側”の教員ばかりでなく、“殴られる側”の生徒やその親の心にも浸透しているようだ。体罰教育の背景には、何が横たわっているのか。(取材・文/プレスラボ・小川たまか)

桜宮高校に続き女子柔道日本代表まで
体罰を通り越した明らかな“暴力”事件

「今日も殴られた。30発か40発ぐらい」

――自殺前に生徒が母親に伝えたというこの“体罰”の内容には、言葉を失うしかない。

 昨年12月23日、大阪市立桜宮高校で男子バスケットボール部のキャプテンが自殺していたことを大阪市教育委員会が発表したのは、今年1月8日のこと。その後、バスケット部顧問が行っていた指導の内容や同高のバレーボール部でも、2011年に部員への暴行で顧問が停職3ヵ月の処分を受けていたことなどが明らかになった。

 問題発覚から3週間以上が経過したが、報道は収まらないどころかむしろ過熱している。

 これまでの経緯を振り返ると、橋下徹市長が同高の体育科とスポーツ健康科学科の募集中止を打ち出す(15日)、これを受けて市教育委員会が中止の決定を発表(21日)、同高の在校生8人が橋下市長の判断に異を唱える内容の記者会見を開催(21日)、自殺した生徒の父親が暴行容疑で顧問を告訴し、受理される(23日)など、新たな展開が毎日のように起こっている。

 さらにネットでは、ツイッター上で同高生徒のものと思われる“つぶやき”が発見され、それが橋下市長に対する暴言や喫煙・飲酒があったことを感じさせる内容だったために、非難の的となった。

 “体罰”議論の余波が広がりを見せるなか、30日になって別方面からも火の手が上がった。柔道女子の日本代表強化合宿で暴力行為があったとして、ロンドンオリンピックの代表を含む15人の選手が、園田隆二監督と男性コーチを昨年12月に告発していたことが発覚したのだ。