逆にぜん動運動が弱ければ、便が大腸内にとどまって悪玉菌が増え、善玉菌が減って短鎖脂肪酸も減少する。短鎖脂肪酸のひとつである酪酸が減れば、免疫細胞の暴走を防ぐ制御性T細胞の数も減ってしまう。腸の中で武器となるIgAを作る細胞に刺激がもたらされず、作られる武器の数が減ることもわかっている。
ぜん動運動が活発だと腸内フローラのバランスが保たれて、免疫力が高い状態を維持できるのだ。
◆腸と心身の健康
◇幸せホルモン「セロトニン」と腸
腸は心の健康とも関係がある。小腸と大腸では幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」が作られているからだ。
セロトニンは、私たちが脳で幸せだと感じる時の材料になるホルモンの一つである。セロトニンが少ないと、怒りやすい、イライラするなど、精神が不安定な状態になる。さらにセロトニンには、食欲を抑制し、ドカ食いを予防する効果もある。
セロトニンの8割が腸で作られている。セロトニンを安定して作り続けるためにも、腸の健康は必要不可欠だ。
◇自前の痩せホルモン「GLP-1」
腸ではもう一つ、GLP-1という大切なホルモンが作られる。GLP-1は膵臓からのインスリンの分泌を増やしてくれるホルモンだ。膵臓に「インスリンをたくさん出せ!」と伝えて血糖値を下げ、体には「もう満腹だから食べるのストップ!」と指令を出すようなイメージだ。
さらにGLP-1には、胃酸の分泌を抑えてくれる働きもある。その結果、食欲が抑えられ、糖の代謝も改善して、太りにくい体質になる。
◇ぜん動運動を促すカギは「自律神経」
腸は「食べて出す」ための働きだけでなく、体や心の健康にプラスの作用をもたらすホルモンまで作っているすごい臓器だということがわかってもらえただろう。腸がその機能を十分に果たせるようにサポートしてあげれば、腸が元気になる→さらによく働いてくれる→「食べて出す」がスムーズになる&いいホルモンがたくさん出る→体や心がさらに健康になる、という好循環が生まれる。