空き家が問題化する地方でも
「理想の優良物件」は少ない
二拠点生活がもてはやされて久しい。デュアルライフ、という言い方も定着しつつある。自宅以外の拠点と2カ所で生活する生活スタイルは、もはや高額な別荘を有する富裕層だけの特権ではない。自宅以外の拠点は賃貸でもよく、コロナ禍でテレワークが標準的となった中、ますますこの動きは進みそうである。
私は二拠点生活がうんぬんいわれるはるか以前から、千葉と茨城の二拠点生活を続けている。自宅は持ち家で、二拠点目も廉価(わずか数十万円…過去記事参照)で購入した。そのような経験から考えるに、最近の二拠点生活希望者は、その生活スタイルに大きな期待を抱いているように思える。いわく、猥雑(わいざつ)な大都市での生活から解放される。気分転換としてとても良い。地方の生活は自然が豊富で住宅環境も良く素晴らしいはずだ…などである。
二拠点生活を成立させるためにはまず物件探しが重要だが、前提的にいえば、地方都市であっても、好立地であり不動産価格がある程度維持されているような物件は、そもそも売りに出されれば買い手がつき、よって価格も高いので「理想の優良物件」というのはそこまで多く出回っているわけではない。
当然賃貸物件にしても、良い条件の物件は地元の人がすぐに借りるので、大都市居住者が思い描くような「お値打ち物件」が、市場価格に対して大幅に下方乖離(かいり)するような値段で出されているわけではない。
地方には地方の不動産流通市場があるので、いくら「空き家問題」が盛んに言われていても、大都市居住者が漠然と思い描く「優良物件」があふれているわけでは決してない。
地方都市における不動産市場は、全国に支店を持つ大手不動産会社と地元密着の小規模零細業者、その中間の三種によって構成されている(もちろんこれは突き詰めれば大都市も同じである)が、売買にしても賃貸にしても、大家側が「売りたい」という意志を示さなければ、当然だが流通しない。
保守的な大家は「まったく知らない人間に貸して、もしトラブルが起こるのであれば、空き家のままの方がまし」という意志が強い場合も多く、「空き家問題」で示される数値ほど、現実的に不動産が流通しているわけではないことに注意が必要である。地方には山のように「空き家」が流通している、と思うのであれば、それは間違いだ。