コロナ禍が転機に、分かったのは「実用目的の購入者の多さ」
8年間、仕事のかたわら有志で続けてきた時刻表の発行だが、転機となったのは2020年から始まったコロナ禍だ。中国に行き、実際に鉄道に乗ることが難しくなったため、巻頭特集の執筆を現地の知人に依頼した。コロナの影響で列車が運休になるなどアクシデントもあったが発行頻度は変えず、「中国でダイヤ改正後、約4週間で発行する」という“鮮度”を維持しており、「時刻表の利用者にとって、実用にかなうものになっていると思う」と自信をのぞかせる。コロナ禍で発行部数は減少したが、「それで逆に分かったのは、この時刻表を購入していた人は“実用”で買ってくださっていたということ。2000年代以降、中国駐在員となった日本人で、中国鉄道の旅に目覚めた人もいます。アンケートなどは実施したことがないため読者層は不明ですが、販売状況などの実績から、SNSにこの本のことを書き込んでくれている方々以外に、相当熱心なファンがいるのではないかと感じます」(何氏)。
実は、何氏、twinrail氏ともに、日本の鉄道ファンでもある。日本の鉄道ファンは「乗り鉄」「撮り鉄」、SLファンなど趣向別に細かく分かれており、層は非常に厚いし歴史も長い。知識の面でもすでに研究されつくされた感があるが、「日本の鉄道の旅ももちろん楽しいのですが、日本と比べると中国の鉄道は未開拓。日本人が誰も乗ったことのない路線もあるでしょう。寝台車も多いですし、国境をまたいでロシアやモンゴル、ベトナムまで行く国際列車もある。広大な中国の鉄道には、まだ遊びつくせない魅力があると思います」と2人は語る。
何氏は幼い頃、両親とともに毎年のように中国に帰省していた。両親の故郷は、内陸部の西安市。当時、日本からの直行便はなかったため、空路で北京や山東省に入り、そこから列車で10時間以上かけて西安まで帰った。それがきっかけで中国の鉄道の虜(とりこ)になり、毎回、駅で時刻表を買うことが楽しみだった。同じくtwinrail氏も、大学時代に何氏と親しくなり、初めて中国鉄道の旅を体験。「大学時代に長期休暇などを使って海外に出かけ、中国やヨーロッパなど、海外の鉄道にもハマるというテツ(鉄道好き)はけっこう多いですね」と語る。