もう一人は、高市早苗経済安全保障担当相だ。高市氏は筋金入りの増税論者であるにもかかわらず、「増税を先送りにしてみせた自分PR」に余念がない。そのため、世間一般には増税に否定的というイメージが流布している。

 高市氏はかつて、月刊誌や自身の著作、発言などにおいて、50万円以上の金融所得に対する課税を20%から30%に引き上げる増税案や、企業が保有する現預金への課税の導入、炭素税などに言及。17年衆院選候補者アンケートでも消費税率10%への引き上げに「賛成」していた。

 高市氏は、自身の支持基盤に減税支持派が多いことから、「増税を先送りにしてみせた自分PR」を繰り返している。しかし実際のところ、NHKの「日曜討論」(22年6月19日)で行われた討論の中で、「日本ほど国民負担率が低い国っていうのはなかなかないです」という認識を示し、消費税減税についても否定している。

 なお国民負担率とは、国税と地方税を合わせた租税負担と社会保障負担を合計した公的負担の国民所得に対する比率を指す。

 念のため補足しておくが、財務省の「国民負担率の国際比較(OECD加盟36カ国)※」という資料によると、日本の国民負担率は経済協力開発機構(OECD)加盟36カ国中25番目だ。また、国内総生産(GDP)比国民負担率では36カ国中23番目だ。

※同資料ではOECD加盟国38カ国中、コロンビアとアイスランドについては「国民所得の計数が取得できないため掲載していない」としている

永田町政治の手口にだまされないよう
国民側も賢くなっていかなければ

 ここまで、増税を推進する代表格とも呼ぶべき「増税日本代表」の面々を紹介してきた。この代表たちの「実績」をつぶさに見ていくと、永田町政治の手口がだいたい理解できたのではないだろうか。だます方も悪いが、だまされる方も悪いという論に立てば、やはり私たち国民も賢くなっていかねばならないのだ。

 岸田政権のあまりにも稚拙な政権運営のせいで、政府がさまざまな財政出動政策を小出しに実施したところで、後で増税されて(しかも小出しに配られた金額より高くなって)回収されるのではないかという認識が国民の間に急速に広がっている。「国民を賢くした」という意味で、これは岸田政権の唯一の功績なのではないだろうか。