新卒一括採用の後に来る
「ジョブ型」という働き方
もともと大学生の新卒一括採用は、100年以上前に始まった日本独自の制度だ。戦後は政府と企業団体の合意などに基づきルール化され、順次見直されてきた。
しかし、産業構造や社会の変化に対応できなくなり、強制力もないため、なし崩しになってきた。
企業の雇用形態が多様化し始めたこともその一因だ。従来の採用方式とはそぐわない働き方の社員が増えていく可能性がある。
従来の日本企業は「メンバーシップ型」を基本とし、まっさらの新入社員をまとめて採用。自社にマッチする人材に教育し、入社後の業務や勤務地も会社が指示して、定年まで雇用を保証してきた。社員はさまざまな職務を経験し、キャリアは会社がすべて“お膳立て”してきた。
それに対して近年注目されているのが「ジョブ型」と呼ばれる新しい雇用形態だ。
会社が特定の職務やそれに必要な経験、スキル、資格などをあらかじめ明示して社内外から希望者を募り、社員はその職務にだけ従事する働き方だ。既存社員を対象にするケースが多かったが、新卒採用にまで広げる企業も出始めた。
大手通信会社のKDDIでは20年8月から「KDDI版ジョブ型」人事制度を段階的に導入し、22年4月からは全社員を対象としている。人財開発部新卒採用グループリーダーの足立晶子氏は、その狙いを次のように語る。
「KDDIは通信事業を柱として、国内外での携帯電話サービスに加え、固定電話やインターネットサービスなどを提供しています。ただ、国内の通信市場は飽和状態が予想される中、金融やエネルギーなどの市場にも参入し、幅広い人材を採用、育成することが課題となっています。そこで人事制度全体の見直しを進めているのです」