福音派は米国の国民の約25%を占め、8000万人にも上る。その大部分が暮らすのが、南部から中西部にまたがるバイブルベルトと呼ばれる地域である。17世紀にイギリスから渡ったプロテスタントが入植し、18~19世紀に保守的な信者が急増した。
福音派は聖書の文言を神の言葉として、それを絶対視するのが最大の特徴である。聖書を文字どおり解釈し、絶対的な規範とするため、キリスト教原理主義ともいわれる。現代社会は聖書が書かれた時代とはかけ離れているが、福音派は聖書を絶対視し続け、中絶も同性婚も、そして進化論なども罪深いと主張する。日曜の礼拝には、数千から数万人がメガチャーチという巨大な教会に集まり、カリスマ牧師の説教に熱狂するのも特徴のひとつで、日常的に聖書を読む敬虔な信者が多い。
福音派の若者の間で進む
「宗教離れ」と「リベラル化」
福音派は伝統的に礼節、謙譲、寛容などを信条としてきたが、1970~80年代に共和党保守派と結びつき、莫大な資金力と集票力で政界に影響を及ぼすようになった。レーガン大統領も、家族の価値を訴えて福音派の集票に成功した。
2016年大統領選挙では、福音派の約80%がトランプに投票したといわれる。だが就任後、福音派の主張は政策に取り入れられたものの、トランプ大統領の不道徳きわまりない数々の醜聞や傲慢な発言や振る舞いが明るみに出て、福音派の人々の心も離れていった。この福音派の支持の低下が、2020年の大統領選での敗北につながったと分析されている。
福音派の台頭はリベラル派との間で、国の分断をもたらしたといわれ、バイデン大統領は脱トランプの揺り戻し策を進めている。
一方では、過去数十年にわたり白人キリスト教徒は減少傾向にあり、なかでも福音派が大幅に減り続けている。一時は勢力拡大が見込まれていたが、福音派の中心層が高齢化し、若年層の間では宗教離れとリベラル化が進んでいる。