中国全土で感染急拡大。
街から人の姿が消えてしまった

 風邪薬や解熱剤、N95マスクなどが一斉に不足し、薬の価格は240%も高騰したという。また、「塩水でうがいをする」など、根拠に乏しい民間療法もたくさん出回っている。

 知りあいの介護施設経営者は、WeChatで「どこか、N95のマスクと風邪薬を譲っていただけないだろうか」と助けを求めていた。この知人は2020年5月頃、日本がマスク不足で困っていたときに、中国から大量のマスクを筆者に送り「交流のある日本の施設に送って」と支援してくれた人である。

上海では、街から人の姿が消えてしまった。道路も電車もガラガラだ。(筆者友人撮影)上海では、街から人の姿が消えてしまった。道路も電車もガラガラだ。(筆者友人撮影)
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例年ならクリスマス直前のこの時期、上海の街は人出が増え、イルミネーションで華やかに彩られる。しかし今はショッピングモールにもほとんど人がいない(筆者友人撮影)例年ならクリスマス直前のこの時期、上海の街は人出が増え、イルミネーションで華やかに彩られる。しかし今はショッピングモールにもほとんど人がいない(筆者友人撮影)
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 今週末はクリスマスだ。普段なら、上海などの大都会は、ショッピングセンターやホテルのロビーに、華やかなクリスマスツリーが飾られ、街中がイルミネーションで輝いている季節のはずなのに、今年は違う。地下鉄はガラガラ、街中に人の姿はなく、車の影が見えなくなった。まるで、ゴーストタウンになってしまったかのようだ。

 今の中国は、まるで2020年の上半期、世界中が新型コロナウイルスの恐ろしさにおびえていた頃の日本のような状態だ。コロナ禍が始まって3年間、中国は一体何をしてきたのか……。

少し前まで「中国の厳しいやり方こそが
正しい」と思っていたのに

 厳しい「ゼロコロナ対策」が行われていた頃、中国の国民は政府の言う通りにせざるを得ない状況だった。そしてそれは、成功していたように見えた。中国は都市ロックダウンなど強固な措置を講じていったんコロナを抑えこみ、それによって経済活動が順調に再開できたからだ。

 当時、日本や欧米諸国が感染防止と経済活動のバランスに頭を抱えている姿を、中国は、「政府は寝そべって国民を見捨てている」(=政府が何もしないで国民を見捨てている)や「我々の宿題を丸写しさえできないのだ」(=自分たちの経験とやり方が目の前にあるのに参考にしない)などと冷ややかな目で見ていた。