「アメリカは高齢者を見殺した」「日本の第7波は医療崩壊、地獄」などの報道もたびたびあった。(参考:『中国が日本のコロナ第7波を「地獄」と報じる中国らしい理由』)。また、今年の8月には岸田首相が感染したことが中国で大々的に報道され、「一国の首相まで感染したのか?」と話題になった。習近平国家主席からお見舞いの電報を送られたことも報じられた。

 ところが、ここにきて一気に制限を緩和。現在の中国の人々は、いわばこれまで浮き輪を付けて泳いでいた状態から、突然、浮き輪を外されたようなものだ。「政府の方針」という浮き輪に頼って泳いでいれば良かった状態から、急に浮き輪なしで泳ぐ、つまり「自らの判断」で行動しなければならない状態になってしまったのである。

日本のコロナ対策に、
改めて関心が集まっている

 そこで今、中国で改めて注目され、関心が高まっているのが日本のコロナ対策だ。「日本はどうやって対策しているの?」という関心が急に高まり、日本のコロナ対策を紹介する中国語の記事のアクセス数が急上昇している。

 自由主義国である日本は、中国政府のように厳しいコロナ対策ができない。その中で、「自由」と「感染予防」のバランスを考えながら、政府も国民も苦労しながらコロナ対策を実施してきた。北京在住の大学教員の友人は、筆者に次のように語る。

「我々は当時、『日本のコロナ政策はゆるい、事実上の放棄だ』などと言っていた。しかし実際には、日本は経済活動を中止せず、国民には自由もあり、その間、国が緊急ベッドの確保や医療設備の増加など、医療崩壊しないようにいろいろな措置を取っていた。しかし同じ3年間で中国が何をしたかといえば、ひたすら『ロックダウン』や、街ぐるみで数千万人ものPCR検査を行うことに財力や人力を費やしていた。もし、これらの予算で医療資源を充実させたり、医薬品を開発したりしていたら、今の状況にはならなかったと思う。

 結局、準備がまったくできていないのに政策を転換したこと、しかも段階的でなく、一気に転換したことが大きな問題ということだろう。中国でこれから重症者や死者が爆発的に増えていったとしても、それは無理のないことだ。今になって、日本のコロナ政策は悪いものではないと分かった。我々はずっと、政府の言う通りに従っていただけだった。しかし、自由と感染リスクの兼ね合いがいかに難しいか。今、身を持って分かった」