2025年に開催予定の日本国際博覧会(大阪・関西万博)を巡り、建設工事の入札不成立が相次いでいる。折から続く資材価格の高騰で採算が合わないとして、ゼネコン側が予算内での入札を見送っているからだ。実は、ゼネコンが「無気力入札」に打って出る思惑の裏には、ある業界の悲願に向けた深謀遠慮がある。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

国の威信を懸けた大阪万博で異常事態
10件連続で入札不成立

 国の威信を懸けた一大イベントで、異常事態が起きている。

ゼネコンが大阪万博工事で入札不成立を乱発!「無気力入札」に透ける深謀遠慮提供:日本国際博覧会協会

 日本経済復活の起爆剤として期待が寄せられる日本国際博覧会(大阪・関西万博、以下大阪万博)を巡り、建設工事に関する入札で落札者が決まらない「入札不調」が相次いでいるのだ。

 今年9月以降では、迎賓館や小催事場などの建設工事において10件連続で入札不調となった。そのうち映画監督の河瀬直美さんがプロデュースする「テーマ館」と大催事場の入札については、応札者すら現れなかった。

 大阪万博の建設工事で入札不調が続く大きな要因は、折からの資材高だ。このため、ゼネコン側が予算の範囲内で施工できる見通しが立たないと判断し、予定価格を上回る入札をしたり入札そのものを見送ったりしている。

 入札不調となった案件について、主催者である2025年日本国際博覧会協会は予定価格を2~5割引き上げるなどの措置を講じた上で、2023年1月以降に再入札を実施する見通しだ。

 それにしてもなぜ、ゼネコンはシンボリックなプロジェクトである大阪万博の建設工事を、死に物狂いで獲得しよう動かないのか。

 実は、ゼネコンが「無気力入札」を続ける裏には、業界の悲願成就に向けた深謀遠慮がある。大阪万博は、単に政財界のみならず国民が注目する舞台として選ばれたにすぎない。次ページでは、ゼネコン業界が仕掛けた深謀遠慮について明らかにする。