手応えのある会社人生を
望む人が選ぶべき就職先

経営学者・藤本隆宏氏が就活生向けに日本企業を分析、「製造業は競争力があり、今後さらに明るい産業になる」ふじもと・たかひろ/早稲田大学教授、東京大学名誉教授
1955年生まれ。東京大学経済学部卒。ハーバード大学ビジネススクール博士(D.B.A.)。専攻は、技術管理論・生産管理論、進化経済学。東京大学大学院経済学研究科教授、同ものづくり経営研究センターセンター長等を経て、2021年より現職。『生産システムの進化論』(有斐閣)、『生産マネジメント入門〈Ⅰ〉〈Ⅱ〉』『日本のもの造り哲学』(日本経済新聞出版社)、『能力構築競争』(中央公論新社)、『現場主義の競争戦略』(新潮社)など著書多数。Photo by Ryuichi Mine

 低成長・労働力不足・賃上げ圧力の時代には、付加価値生産性の向上、納期順守、品質維持がますます重要です。デジタル化は必要ですが、それは手段。目的は自社・顧客・社会のために、付加価値の高い、良い設計の良い流れを作り続けることです。そこに求められる人材は、高高度の戦略思考も、低高度のオペレーション思考も同時にできる「軍師」タイプです。

 こうした手応えのある会社人生を望む人が選ぶべき就職先は、良い設計の良い流れを不断に作り続けるものづくり組織能力、優れたアーキテクチャ戦略の構築力、どこにも負けないコア技術、この三つを兼ね備えた会社でしょう。

 そうした会社で入社数年後に自分が活躍する姿を想像できる明るい会社を選ぶべきです。競争は厳しく、正念場も多いが、それを乗り越えたときの達成感も大きいのが、これからの「明るい製造業」です。

 若いうちに経験値を2倍速で積んでもらい、30歳で管理職、40歳で役員という入れ替え戦ありの「ファストトラック」を用意する企業も増えるでしょう。これを導入した某大企業で、最初に候補者になったのは女性だったそうです。

 優秀な外国人も次々に入社し、Jリーグ的な切磋琢磨で、個人も育ち、会社も強くなる。成長感ある仕事人生を望む人は、こうしたチャレンジが用意された風通しの良い会社を選ぶのがよいでしょう。