年始なので、筆者が日頃考えている日本経済に関する「30の命題」を挙げてみた。命題は、【「資本主義」論の勘違い】【労働と賃金と生産性】【セーフティーネット】【財政】【国としての日本のリアルな形】の5カテゴリーに6個ずつリストアップしている。2023年の日本経済を考える上でヒントになったら幸いだ。(経済評論家、楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)
2023年の日本経済を
「30の命題」から考える
あけましておめでとうございます。本年もご愛読をよろしくお願いいたします。
さて、年の初めなので、今回は広く日本経済全般を考えてみたい。筆者が日頃考えている日本経済に関わる命題を30個ほど挙げてみた。個々には、自信度に差があったり、前提条件が付くものもあったりするのだが、筆者が概ね「YES」だと考えている命題だ。読者には幾つ賛成してもらえるだろうか。
30個の命題を5つのカテゴリーの6個ずつに分けて、思考の筋道に従ってさらっと並べてみた。賛否は読者にお任せするが、日本経済を考えるヒントになると幸いだ。
【「資本主義」論の勘違い】
に関わる6つの命題
2. 日本経済の上層は資本主義的競争を回避した「日本的縁故主義」である
3. 日本経済の下層はカール・マルクスの想定よりも苛烈な「ブラック資本主義」だ
4. 経済成長がなくても資本主義システムは維持可能だ
5. 日本の低成長の大きな原因は新自由主義がなかったからだ
6. 上層も劣位者は経済停滞によって下層に飲み込まれつつある
岸田文雄内閣では「新しい資本主義」が相変わらず検討されているものの、議論の大筋では何ら進展が見られない。それもそのはずだ、と筆者は思う。なぜなら、日本経済の運営は総体として資本主義ではないからだ(1)。
何よりも、経済力的に大企業正社員から上の層の運営にあっては、生産手段(労働力・資本とも)が十分商品化されていない。正社員をクビにできないシステムは少なくとも資本主義ではない。