『情報メディア白書』(電通総研編 小社刊)は1994年から毎年刊行しているデータブック。新聞・出版から広告、携帯電話、通信販売業まで情報メディア全般にかかる14の産業を統計データを元に精緻に分析し、メディア関係者やマーケターの戦略立案を支えてきた。2月に発売した2013年版から、内容の一部をダイジェストで紹介する。第1回目の今回は新聞業界を展望する。
日本新聞協会によると2011年度の新聞社総売上高推計額は1兆9529億円で、前年度と比較して若干の増加に転じた。減収を6年ぶりに脱したことになる。しかし、新聞販売部数および広告収入の減少傾向は続いている。増収となった要因は、新聞各社が新聞外の事業に力を入れたことによるものだ。
さらに新聞産業にとってマイナス材料が二つある。一つは 2012年 7月、行政改革実行本部が発表した 中央省庁の新聞購読費削減。全体の 26.4%にあたる 5億8900万円を削減する方針である。もう一つは、2014年に導入予定とされる税率 8%への消費税増税だ。新聞各社は 5%に税率を据え置く形式での軽減税率を採用し、新聞をその対象とすることを主張している。
新聞を全く読まない人の割合は毎年増加しており、無読者のなかには「購読中断者」と「未経験者」という2つのタイプがあることが明らかになっている。定期購読を中断した人の半数以上が、購読料の高さや家計の見直しなどの経済的理由によるものだが、そのほかにも、ネットで読む新聞ならではの特性を前向きに評価する意見もある。
そうした流れもあってか、電子版新聞は各社ともに会員登録制の有料サービスや外部との協力体制構築に乗り出した。 全国紙でいち早く電子版を有料化した日経新聞電子版は有料会員が20万人を超え、米「TheNewYorkTimes」の32.4万人、英「TheFinancialTimes」の30万人超に続く規模の読者をもつ電子新聞に成長した。
2012年5月には読売新聞が紙面購読者を対象とした「読売プレミアム」サービスを、また、毎日新聞は毎日新聞とスポーツニッポンの記事購読が可能なサービス「TAP-i」をスマートフォン、タブレット型端末に特化した形で開始した。ブロック紙では西日本新聞が2012年10月から地域に密着した経済情報の提供を開始している。