山本明弘・広島市信用組合理事長が語る地元企業の使命、「地域に頼りにされる金融機関じゃないと、生きていくことはできない」Photo by Masato Kato

*本稿は、現在発売中の紙媒体(雑誌)「息子・娘を入れたい会社2023」の「親子で考える『本当に良い会社』」を転載し、一部加筆したもので、内容は取材時のものです。

「シシンヨー」が愛称の広島市信用組合。ここで徹底した「現場主義」を貫く山本明弘理事長の経営手腕は、全国の金融機関から注目されている。就活生に向けて、 地域金融機関の使命などを聞いた山本理事長へのインタビューを上・下2回に分けてご紹介する。(下)では、地元企業で働く魅力などに迫る。(ダイヤモンド社 ヴァーティカルメディア編集部 松野友美)

地域密着だからこそ
肌で感じる「やりがい」

――山本理事長は、新卒で入社して以来、勤続54年目です。入社のきっかけは。

 私は山口県宇部市の出身です。就職活動の際は、地元の有名企業である宇部興産(当時。現UBE)に入りたかったんです。

 それで、東京で試験を受けたら、高校時代の出来の良い同級生がずらっと会場にいた。「あー、滑ったな」と思っていたら案の定……。

 後日、学校の求人欄で見つけたのがシシンヨーでした。

 当時は金融機関ということくらいしか知らなかったが、地元に帰りたかったので、広島の会社ならば近いと思って入社した。

 でも、入社してから分かったのですが、私にぴったりだった。

 融資を担当する中で、融資の依頼のためにさえない顔をして来ていた人たちが、融資が決まってにこっと笑顔になるのを見た。わあ、これで事業が継続できる、助かったと言ってくださる。

 そういうのを54年間見て、肌で仕事の手応えを感じてきた。

 もちろん、きれい事を言っても、当然倒産した会社もあります。それでも、遠い外国の会社などに投資するよりも、地域に貢献することが大事だと思う。