お金は貸してやるんじゃない
使っていただくもの
――職員の育成方針は。
金融機関として徹底しているのは、「お金は貸してやるんじゃない、使っていただくもの」という教育。これには、私の原体験が関係している。
私が入社して間もなく、本店営業部に配属された当時、融資がタイトな時勢でした。だから22歳の若造を前に、取引先の経理部長や社長が「なんとか1000万円お願いします」といって90度も頭を下げてきました。
そのとき、「ははぁ、お金を貸せば、預金も預けてくれる。業績はなんぼでも上げられるな」と思ったんです。
1年後、私は満を持して渉外担当になった。しかし、取引先の新規開拓に向かうと、先々で「うちはメインバンクと取引しているから、帰れ」と断られた。
当時はメインバンクがかなり幅を利かせていたので、それ以外の金融機関が入る隙はなかった。頭を殴られたような衝撃でした。
あとは、一般のマネジメントでは、部下にある程度権限を持たせる。上がってきたものを再考した方がよいと思ったら伝える。
一から十まで重箱の隅をつついては、仕事に妙味がない。
――いい企業で働きたいと皆考えます。長年融資する中で見た優れた会社・経営者の特徴は。
成長したり、存続したりする企業は、ガバナンスがしっかりしていて、コンプライアンスを守っている。悪いことには毅然と対応します。
職場が明るいことや、給料も男女平等に出すことも当然です。
優れた経営者は変に妥協せず、経営方針がぶれません。世の中の流れも読める。世の中の幹が変わってきているのに気付ける人です。
経営は、理論や理屈じゃないので、現場を知った人間が経営しないとダメ。社内では、経営陣に、先見性・洞察力・分析力・判断力・決断力、実行力の6つが大事だということを常々伝え、自分でも頭に置いています。