今日、2023年の元日、あなたの町の近くの大仏にベトナム人が集結しているかもしれない。昨年の正月、筆者が実家のある福岡県の南蔵院という寺の大仏を見に出かけたところ、日本人よりもはるかに多い人数のベトナム人が集まっていたのだ。調べてみて驚いた。南蔵院以外にも、茨城県の牛久大仏、北海道の佛願寺など、日本各地の大仏にベトナム人が集まっていることが分かったのだ。なぜベトナム人が大勢、大仏に集まっているのだろうか?(中国・ASEAN専門ジャーナリスト 舛友雄大)
福岡・南蔵院の大仏に、
ベトナム人が大集結していた
昨年(2022年)の元日、筆者が実家のある福岡に帰省していたところ、家族の誘いもあり車で少し遠出して大仏を見に行くことにした。南蔵院というお寺だ。正直、「なぜ元日に大仏?」という若干の戸惑いもあった。到着して境内へ向かう丘陵の小道を上っていると、すれ違う人々がベトナム語をしゃべっていた。その後ろからも次々とベトナム人のグループがやってくる。「なぜ、ベトナム人だらけなの?」と頭の中がクエスチョンマークだらけになった。
お目当ての寝仏(涅槃=ねはん=仏)のある広場へ着くと、あちこちに20代と思しきベトナム人の男女グループが、楽しそうに写真を撮り合っている。200人ほどいた参拝者のうち、ベトナム人の割合は3分の2ほどだろうか。南アジアの他の国の出身者らしき人もちらほらいる。物静かでお年寄り中心の日本人は、ここでは完全にマイノリティーだ。
お寺の方に聞いてみると、「去年(2021年)にはもう大勢(外国人が)来るようになりましたよ。どこの国の方か分かりませんが。電車で来ていらっしゃいます」との答えが返ってきた。確かに電車で来ているようで、近くのこぢんまりした駅には似つかわしくないほどの長い行列ができていた。
実際に参拝に来ているベトナム人に話を聞いてみると、福岡県内の近郊都市からきているパターンが多いようだ。20代でメディア業界勤務のベトナム人、フイさんも友達とやってきた一人だった。正月に開運を願うのはベトナムの風習である。正月に神社へ行く日本人が多い中、彼らはここを選んだ。「福岡中からベトナム人がここに来てるよ」とも。