創業9年目で売上300億円と、急成長を遂げている家電メーカー、アンカー・ジャパン。そのトップに立つのは、27歳入社→33歳アンカーグループ最年少役員→34歳でアンカー・ジャパンCEOに就任と、自身も猛スピードで変化し続けてきた、猿渡歩(えんど・あゆむ)氏だ。「大企業に入れば一生安泰」という常識が崩れた現代、個人の市場価値を高めるためには「1位にチャレンジする思考法」が必要だと猿渡氏は語る。そんな彼が牽引してきたアンカー・ジャパンの急成長の秘密が詰まった白熱の処女作『1位思考──後発でも圧倒的速さで成長できるシンプルな習慣』が発売たちまち話題となっている。そこで今回、本書の発売を記念して、ビジネスパーソン「あるある」全20の悩みを猿渡氏にぶつける特別企画がスタートした。第4回目は「年始にやるべき1年戦略の立て方」について教えてもらった。(構成・川代紗生)

1位思考

目標達成するための3ステップ

──年明けに「1年間の目標」は立てていますか?

猿渡歩(以下、猿渡):現在は、「アンカー・ジャパンを成長させること」がなによりも大きな目標です。

 自分自身の目標ともそれはつながっていると思います。

 ただ、学生時代や20代の頃は、「自分が取り組む領域で1位になる!」と、大きな目標を常に意識していました。

──『1位思考』を読んでいると、戦略的に努力すればこんなに成長できるんだ、自分にもやれるかもしれない、という気持ちにさせられます。

 1年間で圧倒的成長を目指す人は、年始にどんな戦略を立てるといいでしょうか?

 おすすめの方法があれば、教えてください

猿渡:次の3つのステップに沿って考えてみるといいと思います。

1.明確な「目的意識」を持つ
2.目標達成までの手段を因数分解する
3.習慣化する

──なるほど。一つずつ、教えていただけますか?

ステップ1:明確な「目的意識」を持つ

猿渡:たとえば、新年に「今年は絶対5キロやせるぞ!」と決めたのに、1ヵ月も続かなかった……ということはありませんか?

──はい。よくあります。

猿渡:組織でも個人でも同じですが、目標達成するまであきらめずにやり抜くには、「目的意識」が必要不可欠です。

 企業が、「ミッション」や「バリュー」を明確にするのと同じように、個人も、将来どうなりたいか、そのためにどう行動するか、自分の夢をどう実現するか、具体的にイメージできるといいと思います。

「やりたい」と思いながら、なかなか目標達成できないのなら、案外、心の底から実現したいとは思っていないのかもしれません。

──そうですね。「また達成できなかった……今年こそは!」と年始になるたびに後ろめたさを感じる目標は、なんとなく書いているだけのこともありますね。

猿渡:たとえば、5キロやせたら、何をしたいのか。

 5キロやせた自分を、自分が肯定できることが大事なのか。

 それとも、5キロやせることで、何か別の仕事につなげたいのか。

 それとも、モテるための手段なのか?

「ダイエットする」ことだけが目的になると続かないので、本当の目的とは何だろう? と、自分の中の「原動力」を探してみるといいと思います。

──「原動力」を探す。
 具体的には、どんなものが「原動力」になりやすいでしょうか?

猿渡:たとえば、「仕事」に関する目標を立てるなら、年収やポジションなどはわかりやすい指標になってくれると思います。そしてそれらを得ることができてどういうことをしたいのかを思い描く。好きな街があるなら、「憧れの場所に住みたい」などもいいかもしれませんね。

──「年収」は数字としてわかりやすいので、モチベーションが上がりそうです。

猿渡:たとえば「1000万円を稼ぎたい」と思った人が全員稼げるわけではありませんが、「1000万円を稼ぎたい」と思わない人は稼げない

──たしかに。うっかり1000万円、稼げちゃった! とは、なかなかならない。

猿渡:「うっかり目標達成」はないんです。

「こういうことができる自分でありたい」「こういうところに住みたい」など、強い意志がモチベーションの原動力になります。

 私の場合は、大学受験に失敗した悔しさが、「同世代で1位になりたい!」という強力なエンジンになり、20代の私を突き動かしてくれました。

──当時、成し遂げたいことを、紙に書いて貼ったりはしていましたか?

猿渡:紙に書くことはしていませんが、大変なときも、頭の片隅で常に思っていました。

「自分のやりたいことはこれだから、このためにがんばろう。だから今がんばってるんだ」と、言い聞かせていました。

 紙に書いてよく目にする場所に貼っておくのも、いい方法だと思います。

ステップ2:目標達成までの手段を因数分解する

──「因数分解の習慣」は、『1位思考』でも1章まるまる解説されているくらい、重要なポイントでした。

猿渡:これは、「継続できない」という悩みを解決するために必要です。

 行動を継続させるポイントは、小さな成功体験の積み重ね

 もちろん、ストレスをかけたほうが成長度合は強くなりますが、疲れたり潰れたりして、継続できなければ意味がありません。

 そこで、小さな打ち手を考えると、少ないストレスで成功できます。

難問は、それを解くのに適切かつ必要なところまで分解せよ」という哲学者、ルネ・デカルトの有名な言葉がありますが、ビジネスでも個人でも、何か達成したい目標があるなら、「手が打てる」段階まで分けて考えるのがいいと思います。

 たとえば、「5キロやせる!」とい目標がある場合、まずは「週3回ジムに通う!」という行動計画が立てられると達成しやすくなります。

ステップ3:習慣化する

──打ち手を小さくして、続けやすくするわけですね。
 あとは、ステップ3「習慣化」させるですね。

猿渡:大切なのは、1回だけ努力するのではなく、毎日ちょっとずつでも、必要なことを淡々とやり続けることです。

 何もしなかった1年と、ほんの少し努力を続けた1年。どれだけ差が生まれるのか、数字にすると一目瞭然です。

 たとえば、毎日、前日より1%ずつ成長する、と仮定してみましょうか。

──たしかに、前日より1%だけでいいから前に進もう、と考えると、気持ちがラクになります。

猿渡:そうですね。『1位思考』にもいくつか学生時代のエピソードを書きましたが、「悔しい」という気持ちは、成長において大事だと思います。

──社員に対して、そのような考え方を伝えたりすることはありますか?

猿渡:そうですよね。でも、たった1%でも、結果的にとても大きな差になるんです。

・何もしなかった1年:1×1を365回繰り返す(1の365乗)=1のまま
・1%の努力を続けた1年:1×0.01を365回繰り返す(1.01の365乗)=37.8

 つまり、1%のよい習慣が身につくと、1年後には37.8倍に成長しているんです。

──37.8倍!! そうか、毎日の歩みは1%でも、続けていればそんなに大きな差になるんですね。

猿渡:目標が高すぎて続かないときは、因数分解がまだ足りておらず、達成できるほど小さな目標になっていないのかもしれません。

「せっかく筋トレをがんばったから、今日は炭水化物を控えめにしよう」など、習慣に紐づけ、ほんの少しでも目標達成に近づくための行動を取る。

 すると、成功体験が積み重なっていくので、モチベーションも維持しやすいと思います。

 すぐに明確な成果は出ないかもしれませんが、大きな目標も、小さな1%の積み重ね。

 それは個人でも組織でも同じことです。

 アンカー・ジャパンを創業9年目で売上300億円に成長させるという大きな目標を達成できたのも、1%のこだわりの結果です。

1位思考』では、そのためにやってきた全ノウハウをまとめているので、目標達成のヒントにしていただけたらと思います。

(本稿は『1位思考』に掲載されたものをベースに、本には掲載できなかったノウハウを著者インタビューをもとに再構成したものです)