女優・不二家社外取、酒井美紀氏が語るキャリア「人間は二つ以上の役割があれば、バランス良く立つことができる」Photo by Masato Kato

*本稿は、現在発売中の紙媒体(雑誌)「息子・娘を入れたい会社2023」のSPECIAL INTERVIEW「My Career Road」を転載したものです。

16歳での映画デビュー以来、女優として活躍する酒井美紀さん。女優業を続けながら、国際協力のボランティア活動や、社会人大学院への進学、企業の社外取締役就任など、さまざまな分野へ活動の幅を広げている。全ての経験は女優のキャリアに生きてくるという。(取材・文/上條昌史 スタイリスト/飯田恵理子<CORAZON> ヘアメイク/中山 静)

番組出演を機に
国際協力活動に強い関心を持った

 酒井美紀さんは、女優業のかたわら、国際協力NGOのワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ)の親善大使を務めている。ボランティア活動は幼い頃から親しんできた活動だった。

「小学校の頃にガールスカウトでボランティア活動をしていたことがあり、福祉的な活動をしたい気持ちはずっとありました。きっかけはテレビの『世界がもし100人の村だったら』という番組への出演です。取材先のフィリピンで“スモーキーマウンテン”()の児童労働の実態を見て、大きなショックを受けました。社会の大きな構造の中から生まれてくる貧困問題を前にして、自分にできることは何だろう、と考えたのです」

 帰国後、ネットで調べてWVJの存在を知りチャイルドスポンサーになった。現地の子どもと交流しながら生活や教育をサポートするための寄付をする活動だ。その後、WVJからオファーを受け、親善大使として活動するようになった。

 近年、視察に訪れたのはヨルダンにあるシリア難民キャンプ。キャンプ内にはWVJが支援する学校もあり、そこで酒井さんは、教育に“応用演劇”が取り入れられている現場を見学した。

「応用演劇とは、個人や社会に有益をもたらすことを目的とした当事者による演劇活動です。例えば、早婚の風習についての本心を、幼い女の子たちは演劇を通してならば親に伝えられる。教育の一環なので、それですぐ社会が変わるわけではありませんが、生活に変革を起こさせるきっかけになる。その現場を見ながら、応用演劇を国際協力の手段として使えないか、女優の私が手伝えることがあるのでは、と思ったのです」

※かつてフィリピン・マニラ市北方に存在した、巨大なゴミ山とその周辺のスラム街