「中央銀行は債務超過にならない」というのはウソ

 この問題に対しての日銀の答えは、今も昔も「日銀は償却原価法(簿価会計)を取っているから、債務超過にはなりません」です。つまり、保有国債の時価が下がっても自分たちは取得時の価格で計上しているから問題ないという話ですが、こんな話が世界で通用するはずがありません。

 22年9月に起きたいわゆる「イギリス経済危機」では、トラス政権のバラマキ政策に市場がNOを突きつけたことで、通貨ポンド、債券、株式のトリプル安が発生し、膨大な評価損が発生しました。

 中でも英国債を担保に借り入れを行っていた英年金基金が、担保価値の低下により国債の売却を迫られたことで、国債価格の下落、利回り上昇に拍車がかかりました。これは世界が時価会計によって動いているということに他なりません。

 結局、トラス政権はわずか1カ月半で退陣を迫られました。そのことが、簿価会計など前世紀の遺物であることを雄弁に物語っています。

 では、日銀が債務超過になると、どうなるのか。

 世界はそんな日銀および日本を見放し、その日銀が発行する「円」の価値は暴落していくことでしょう。その引き金を引くのはおそらく「外資」です。

 円の価値は1ドル150円どころかさらに下がっていき、ついには天文学的な数字になる可能性があります(このあたりのメカニズムは近著『超インフレ時代の「お金の守り方」』に書かせていただきましたので、ぜひ、お読みください)。

 その意味で、現在の円高による調整局面は、自分の資産を守る「最後のチャンス」といえるかもしれません。ぜひ、冷静な判断をしていただきたいと思います。