仕事で行きづまったとき、多くの人は社外の人への相談をためらうだろう。しかし、分解思考で問題の要素を分解していけば、社内の情報を漏らすことなく社外の人に相談することができる。「会社の売り上げが5000万円なんだけど、それを1億円にするにはどうすればいいかな?」という相談は赤裸々すぎるが、分解思考で「売上=件数×客単価」と問題を分解できていれば、「客単価を2倍にする方法ってあるかな?」と、内情に触れずに具体的な質問ができる。もし「お客さんから別のお客さんを紹介してもらうのがよさそう」と仮説を立てていたら、「お客さんから口コミで紹介してもらえるようなやり方ってありますか?」とより具体的な方法を聞くこともできる。「こんな分解の仕方を考えたんだけどどうですか?」と、分解のし方そのものを相談することでも、有益な情報が得られるだろう。
◇チームみんなで答えを見つける
著者はアドバイスをしている会社に「答え」を提示することはほとんどない。最初から具体的な「答え」を提案したら、現場の人は疑問を感じ、反発するだろう。
大切なのは、現場で働く人たちが自分で方法を発見し、納得感を持って働くことだ。だから、担当者といっしょに、ワークショップという形式で分解を行う。現場のことをよくわかっている人たちからは実態に即したアイデアが次々生まれ、少し促すだけで優先度をつけて結論を出すことができる。著者の役割は、現場の人たちが自ら考え、自走するための手助けをすることだ。
チームで分解思考を進めるときには、ホワイトボードや紙などに書き出しながら話すとよい。一緒に議論していても、それぞれの人は違うイメージを持っている。きちんと書き出しておかなければ、その違いを認識しないまま、かみ合わない状況が続き、話がややこしくなっていく。書き出して共有すればズレがなくなり、議論の脱線も防ぐことができる。
◇「たとえば?」を問いかける
分解思考には、「たとえば?」を問いかける方法も有効だ。
日本企業の会議では、誰もが「正解のようなもの」を出そうとして、うんうん唸った末に長めの意見を最後に出す。一方、外資系企業ではとりあえず答えをたくさん出していく。「影響力がある人とコラボしよう」というテーマで話すのだったら、「たとえばビジネスの人ですか?」と誰かが聞く。それをきっかけに話はどんどん具体的になり、「たとえば?」の力でアイデアは答えに向かってフォーカスしていく。会議でも日常会話でも、常に「たとえば?」を使って、確からしいものを探っていく習慣をつければ、スムーズに答えに近づくことができる。
顧客との会話でも「たとえば?」と問いかけることで、相手のニーズを分解してとらえることができる。「本当に欲しいものってこれじゃないですか?」というレベルまで持っていくことができれば、受注率は格段にアップする。