前回は、相手にナメられたりすることなく、対等な人間関係を築くためには、交渉術を身に付けることが大事だとお話ししました。交渉術というと、相手を煙に巻く、ライバルを出し抜くといったテクニック的なことを想定するかもしれません。しかし、交渉術のもっとも重要なポイントは「交渉が始まる前のマインドセット」です。書籍『頭のいい人の対人関係 誰とでも対等な関係を築く交渉術』の著者が、交渉術において非常に大事な、5つのマインドセットについて解説します。(教育コンテンツプロデューサー/株式会社士教育代表取締役 犬塚壮志)
対人関係に悩む人こそ「交渉」を学ぶべき理由
対人関係の悩みを払拭する最良の投資とは何でしょうか?答えは、「交渉力を高めること」。これに尽きると私は考えています。
交渉は、弁護士や外交官のような、それを専門とする職業の人だけが行っているわけでなく、日常生活の至るところにあふれています。しかし、日本では交渉について教わる機会はそう多くはありません。むしろ、「交渉術」を教わったことがあるという人のほうが少ないのではないでしょうか。
結果、多くの日本人は交渉に対して次のような苦手意識を持ちがちです。
・交渉をすることで、周囲の人との間に波風を立てたくない
・交渉術とは、ブラフなどで相手をだましたり欺(あざむ)いたりするような行いだ
・面倒な駆け引きをするくらいなら、交渉せずに済ませたい
・交渉よりも、察し合って進めていくのがスマートな大人のやり方だ
こうした苦手意識を持った人と、交渉慣れした人とが、ある条件を巡って対峙した場合、優位に立つのはどちらでしょうか?
交渉慣れした人は、自分の考えをハッキリさせ、自信を持ちながら、相手に自分の思惑を悟られないような精神状態で交渉に臨み、相手よりも優位に立つことができます。一方、交渉に苦手意識を持つ人は、交渉が始まる前から相手に負けてしまい、対人関係でつまずくことが増えます。
つまり、交渉に臨む心構えを知り、交渉力を高めることで、対人関係の悩みを劇的に解消することができるのです。
私もかつては、対人関係に悩みながらもできるだけ周囲と波風を立てないことを好み、駆け引きをするくらいなら自分が我慢して、損な役回りも受け入れていました。でも、真剣に仕事に取り組むうちに、「きちんと交渉に臨むことが、結果的に自分と仲間を守ることにつながる」と気付いたのです。
それでは、具体的にどのような心構えを行えば、相手と対等に交渉ができるようになるのでしょうか?