資産を増やしたのは1割の上級国民だけ
超・階級社会は下克上が起こり得ない
メリットを享受したのは、円安などを追い風にした株高で富を増やした上級国民だ。その一方で、円安と貿易赤字の常態化という「弱いニッポン」を警戒した上級国民は、円を外貨に替えるなど資産防衛も怠らなかった。
これに対し、中級以下の国民は大して得をしなかった。円安によって企業が好業績に沸いても賃金の上昇にはつながらず、家計への恩恵は少なかったからだ。
アベノミクスの厳しい現実を突き付けたのは、野村総合研究所が20年に実施したアンケート調査に基づく推計だ。上級国民に当たる準富裕層以上は資産を増やした一方で、中級国民、下級国民であるアッパーマス層、マス層は資産を減らした。富める者は富み、貧しい者はより貧しくなったのだ。
かつてジャパン・アズ・ナンバーワンと称された日本はいまや「貧国ニッポン」と化した。下克上が一切起こり得ない理不尽な超・階級社会が迫っている。