ロンドンビジネススクールで人気のリンダ・グラットン教授の講義ロンドンビジネススクール主催のイベントで講演するリンダ・グラットン教授(米ニューヨーク/2020年2月撮影) (C)London Business School

『LIFE SHIFT』『LIFE SHIFT2』を通じて人生100年時代の生き方を提唱したリンダ・グラットン教授が新たに働き方に焦点を当てた『リデザイン・ワーク 新しい働き方』を出版した。新型コロナウイルス感染症拡大によって社会や企業が大きく変わる中、日本企業の人事制度はどのように改革していくべきか、現在の日本企業の人事制度の課題は何か。グラットン教授に聞いた。(聞き手/作家・コンサルタント 佐藤智恵)

>>前編より続く

日本企業がやりがちな
「終身雇用か、否か」の二択の議論

佐藤:世界中で人材獲得競争が激化する中、日本でも年功序列・終身雇用を基本とした人事制度を見直す企業が出てきています。日本企業の人事制度改革をどのように評価していますか。

グラットン:日本企業の経営者や管理職の方々と意見交換していて、いつも感じるのは、「終身雇用制を続けるか否か、日本企業はどちらかを選ばなくてはならない」と思い込んでいる人が極めて多いことです。しかし、日本企業が取り組むべきなのは、二択から一つを選ぶことではなく、自社ならではの人事システムを柔軟に構築していくことです。

 また「欧米では転職しながらキャリアアップするのが当たり前だ」という固定観念を持っている人が多い印象も受けますが、これも事実ではありません。

 ユニリーバ、GE(ゼネラル・エレクトリック)、シェル、マイクロソフトなど、欧米の代表的な企業は、コロナ前から大胆な人事制度改革に取り組んでいましたが、これらの企業が目指しているのは、社員がより幸せに働けるような柔軟な人事制度の構築です。「シニア社員になるまで自社で働き続けること」を否定するようなものではないのです。