今回は、日本海洋掘削の倒産を取り上げる。高い技術力を誇り旧東証一部に上場していた同社はなぜ、創業50年の節目に倒産してしまったのか。その理由を探るとハイリスク・ハイリターンの事業構造が抱える「落とし穴」が見えてくる。(中京大学国際学部・同大学院経営学研究科教授 矢部謙介)
創業50周年、日本唯一の海底資源掘削会社
「日本海洋掘削」の倒産
今回は、日本海洋掘削の倒産を取り上げる。
日本海洋掘削は石油や天然ガスの探鉱開発に関する掘削工事などを行うことを事業目的として、1968年4月に設立された日本唯一の海底資源掘削会社だ。
08年12月からは子会社の日本マントル・クエストを通じて海洋研究開発機構が保有する地球深部探査船「ちきゅう」の運用・管理業務を受託。13年3月には「ちきゅう」を使って愛知・三重県沖の海底にあったメタンハイドレートからのガス産出に成功したことが注目を集めるなど、掘削の技術力には一定の評価があった。
09年12月には東証一部に株式を上場した同社だったが、創業50周年を迎えたばかりの18年6月22日に、会社更生法の適用を東京地裁に申請して倒産することとなる。日本海洋掘削が経営破綻した経緯と理由はどのようなものだったのか。09年3月期から倒産直前の18年3月期までの10期分の決算書データを使って読み解いていこう。