前期高齢者の医療費の現役負担「収入に応じて調整」導入で懸念される本末転倒Photo:PIXTA

前期高齢者給付費の負担見直し
報酬高い健保や共済は負担増に

 政府の全世代型社会保障構築会議が、2022年12月16日に報告書を取りまとめた。

 さまざま論点が掲げられているが、前期高齢者(65~74歳)の医療費の財源負担の配分について、現行の高齢者の「加入者数に応じた調整」に加えて、現役層である加入者全体の「報酬水準に応じた調整」(報酬調整)の仕組みを導入することが示された。

 現在、75歳以上の後期高齢者医療制度や介護保険での現役層の負担は、報酬に応じたものとなっている。同じ考え方を前期高齢者の医療費の負担配分にも、一部、導入するもので、24年度から新制度に移行すると見込まれる。

 政府は今回の見直しの目的を「被用者保険者間の格差是正」としているが、加入者の報酬が相対的に高い健康保険組合(健保)や公務員の共済組合(共済)の負担感は一段と強まることになりそうだ。

 もともと、現役世代が報酬に応じて高齢者の医療費や介護費を支える財政調整は負担と受益の関係を歪めるものだ。

 高齢化が進むなかでは支え合いが不可欠とはいえ、負担の配分方法の手直しに注力するあまり、肝心の給付効率化の視点や取り組みがなおざりになってはならない。