坂東眞理子さんが提言!思い込こみなんてないが一番の思い込みアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)は、自分自身にも跳ね返ってくる(写真はイメージです) Photo:PIXTA

「アンコンシャス・バイアス」という言葉が、最近ようやく見聞きされるようになってきました。日本語にすると「無意識の思い込み」という意味です。「思い込み」と聞くと、「自分は関係ない」「頭の固いオヤジが持っているもの」などとイメージする方も多いかもしれませんが、それこそ、「アンコンシャス・バイアス」です。会社や家族に向けて無意識のうちにとっている言動が、実は、知らぬ間に人を傷つけたり、不愉快にさせたりするのです。そこで今回は、300万部を超えるベストセラー『女性の品格』(PHP研究所)の著者・坂東眞理子さんの最新刊『思い込みにとらわれない生き方』より、「アンコンシャス・バイアス」にとらわれずに生きるためのヒントを紹介します。

そもそもアンコンシャス・バイアスとは何か?

坂東眞理子さんが提言!思い込こみなんてないが一番の思い込み坂東眞理子さん 写真・門間新弥

「アンコンシャス・バイアス」とは、「無意識の思い込み」のことを指します。これは、人間誰もが持っているもので、良い・悪い以前の事実です。大切なのは、「私もアンコンシャス・バイアスを持っている」という認識をまず持つことです。精神分析で有名なジークムント・フロイトは、人間は、理性的な存在ではなく、自分で意識していない過去の経験によってつくられた潜在意識を持ち、無意識に動かされていると提示し、近代の人間観に大きな影響を与えました。

 私たちがとらわれている思い込み、具体的にアンコンシャス・バイアスとはどんなことを指すのでしょうか?例えば、有名大学を出た人だから、優秀で頭がいい。頼りなさそうな男性でもいざという時には頼りになる。男の子はオクテだがあとでのびる、女の子はあとでのびない。関西人は面白い人が多い。女性なのにラグビーをやっているなんて、女らしくない。家事や子育ては女性がやるもの……。

 もちろんこういった思い込みは、全員にあてはまる事実ではありません。平均をとれば、少しはその傾向があるのかもしれませんが、個人差の方が大きいのです。そういう人もいるけれど、そうでない場合もあるということです。個人の限られた経験による「思い込み」です。アンコンシャス・バイアスは、さまざまなところに潜んでいます。

レッテルを貼ることが、いつか自分に跳ね返ってくる

 いわゆる学歴が高かったとしても、優秀ではない人もいます。逆に大学卒でなくても、優秀な人もたくさんいます。人それぞれ異なる存在なのに、まとめてレッテルを貼って、「こういう人」と思い込んでしまうことこそ、アンコンシャス・バイアスなのです。さらにその思い込みがエスカレートしてしまうと、偏見や差別にまで発展してしまいます。入社試験で女性の方がしっかりしていて優秀な成績でも「女の子は入社後のびないが、男の子は成長する」と思い込んで男性を採用するといったことが当然のように行われています。

 しかも、アンコンシャス・バイアスは、自分自身にも跳ね返ってきます。例えば、女性が「女性の幸せは結婚して子どもを産むこと」と考えてしまう。あるいは男性が「男性はちゃんとした職に就き、妻子を養える収入が必要」と決めつけてしまう。

 私はアンコンシャス・バイアスにおける最も大きな問題は、ここにあると考えています。すなわち、自分自身がアンコンシャス・バイアスにとらわれて自分の価値観が影響されてしまうことで、自分の視野を狭め、世界を小さくしてしまうということです。

 今、社会は大きな変化を迎えています。ICTの普及によるリモートワークなどの生活の変化はもちろん、LGBTQや夫婦別姓の問題など、多様な価値観を認めることも求められています。そんな社会にいちいち腹を立てないで適応していくためにも、自身の中にアンコンシャス・バイアスがあることを認めていくことから始めていかねばならないと思います

同調圧力とアンコンシャス・バイアス

 アンコンシャス・バイアスを語るうえで、大きな影響力を持つのが、同調圧力です。同調圧力とは、少数意見を持つ人に対して多数意見に合わせさせるような空気がある、あるいは直接圧力をかけることを言います。世界中どこの国でも多かれ少なかれ同調圧力はあると思いますが、特に日本は多数派に従った方が楽だという志向が強く、「長いものには巻かれろ」という諺もあるほどです。そしてこの同調圧力が、より強いアンコンシャス・バイアスを生んでいるといってもいいのではないでしょうか。

 例えば、子どもの卒業式に参加するお母さんたちの服装を考えてみましょう。多くのお母さんが、紺や黒のスーツを着てきます。規則で強制されているわけではありませんが、「周囲から浮かないように、目立たないようにしよう。見苦しくないようにしよう」と考えた結果、個性を出さずに無難な服装を選んでしまいます。すると、「卒業式のような行事の時は、紺や黒のスーツで来なければならない」という暗黙の了解が自然と醸成され、それが人の行動を束縛することになってしまうのです。

 たとえ本人がそれは嫌だな、と思ったとしても、周囲の中で同調している方が目立たず、批判されることもないので、つい同調してしまうのでしょう。同調圧力は、このように卒業式の時の服装に限らず、世間のさまざまな常識を形作っています。この同調圧力は、「ピア(仲間からの)プレッシャー」と表現されます。仲間内だけで通じる価値観、思い込みという意味です。

 特に若い頃は、家族よりも友人の意見を大事にする時期でもあります。そのため、自分の仲間が受け入れてくれるような服装、ものの言い方、行動をしなければいけない、という思いにとらわれることが多いのです。