「どう思われようと、俺の知ったこっちゃない」

 それはともかく、マスクは自身の炎上や誹謗中傷に「心が折れる」ことはないのだろうか?

 Zip2を経営していた頃の話だ。新しいサイトの立ち上げについて、マスクが技術的な変更を社員の1人に指示したところ「それは無理だ」と反論されたことがある。

 その時マスクはたったひと言、こう吐き捨てて部屋を出ていってしまった。

「どう思われようと、俺の知ったこっちゃない」

 自分の要求に対して「ノー」と言う部下に対して、厳しい言葉を口にするのはスティーブ・ジョブズもジェフ・ベゾスも同じだ。しかしマスクの場合は「ノー」を受け付けないばかりか、部下が自分のことをどう思おうとどうでもいいという態度をはっきりと示すところにすごみがある。

 今でこそマスクのことを「ペテン師」と揶揄する人は減ってきたが、2008年頃、スペースXもテスラも行き詰まっていた頃は、こんな言葉でマスクを揶揄する人たちがいた。

「全財産を失い破産寸前のペテン師」

「宇宙産業の大ぼら吹き」

 確かに当初の計画に遅れが生じるのがマスクの常だけに、「詐欺師」「ペテン師」よばわりする人がいてもおかしくはない。しかし、こうした声のすべてを、「言ったことは必ず実行する」ことでねじ伏せてきたのもマスクである。

「世界一の投資家」とよばれるウォーレン・バフェットが大切にしているのが「内なる声に従う」だ。たいていの人は、自分では「こうしたい」と考えたとしても、周りの声や世の中の声に押されて、自分の考えを変えてしまう。「外の声」に耳を傾け過ぎ、「内なる声」を軽んじてしまうのだ。

 しかしマスクは「どう思われようと、俺の知ったこっちゃない」発言からもわかるように、常に「内なる声」に耳を傾けることで成功を収めてきた。

 バフェットを始めとする成功者も、「外の声」に逆らってでも「内なる声」に忠実に前に進むことで成果を手にしている。

 アメリカがITバブルに沸いていた頃、IT関連への投資をしないバフェットは、「時代遅れのチンパンジー」と揶揄されたが、その後、バブルがはじけてIT関連の株は大幅に値を下げた。「内なる声」に従ったバフェットが正しかったことが証明されたのだ。