足腰の弱い高齢の両親に
このシューズを贈ろうとする人も
NIKEは「フライイーズ」というシリーズを出しており、障がいを持つ人の声をもとに開発したテクノロジーが搭載されているという。「ゴー フライイーズ」もそのシリーズの一つ。公式サイトには、障がいのある人から子どもや荷物で両手を塞がれた母親まで、さまざまな利用者のライフスタイルに対応することを目標にしていると書かれている。
たしかに、このシューズは妊婦や子育て中の人に限らず、さまざまな人の不便を解消するものだろう。実際、SNSにもこんな意見があふれている。
「脚が悪い母さんにNIKEのゴー フライイーズを買った」
「腰椎圧迫骨折でしゃがめなくなった母に、お年玉としてNIKEのゴー フライイーズをプレゼント。立ったまま、靴べらなしで着脱できるのでお気に召した模様」
「おばあちゃんの誕生日にプレゼントした。スニーカーも進化しているんだね」
妊婦や子育て中の人にウケているのは、手を使わず簡単に着脱できる点。その特徴は高齢者や足腰の弱った人など、さまざまなハンディや不得意にも届く機能といえる。
言い方を変えれば、何かしらの障がいや不便を持つ人が喜ぶものは、その延長線上でいろいろな人のハンディや煩わしさをカバーするといえるだろう。
発達障がいの人の声から生まれた
人気のノート「mahora」
この観点で見ると、世の中には特定の障がいを持つ人に向けて作ったもの、あるいは障がいを持つ人の声をもとに開発したものが、広くさまざまな人にヒットしたケースも少なくない。
大阪にある大栗紙工が開発したノート「mahora(まほら)」も、その一つだ。
この製品の開発は、発達障がいのある人が既存のノートにさまざまな不便を感じていると知ったところから始まったという。その不便とは「紙の反射がまぶしくて文字が書きにくい」「罫線以外の情報が気になって集中できない」などだ。
そこで発達障がいの当事者にアンケートを行いながら、このノートが作られていった。
mahoraの製品は大きく二つあり、一つはノートの用紙に太い線と細い線が5mm間隔で交互に入ったもの。書いている行の識別がしやすく、2行を使って大きく文字を書いたり、漢字にふりがなを書いたりするのにも便利だという。
もう一つは、ノートの用紙に網掛けの帯が8.5mm間隔で入ったもの。罫線ではなく網掛けなので、行内に文字を収めて書くにも、行を気にせず絵や図を自由に描くにも便利だという。
2020年2月から販売したmahoraは、2021年7月までに累計5万冊のヒットとなった。目にやさしい作りや使いやすさを理由に、発達障がいのある人だけでなくさまざまな人が購入している。